都市型SUVに変身
従来のエクストレイルは、不整地をガンガン走るハードなイメージの車だったが、新型は都市型のSUVに生まれ変わった。トヨタのハリアーやマツダのCX-60などがライバルになるだろう。
発電用エンジンは、日産が世界で初めて量産化した可変圧縮のターボエンジンVC-TURVO。「夢のエンジン」とも呼ばれる革新的なエンジンだ。通常のエンジンは圧縮比が一定だが、VC-TURVOは8.0~14.0まで可変させることで低燃費、高出力化を実現した。1.5リットルの排気量から最高出力106kW(144馬力)、最大トルク250Nm(25.5kg)を発生する。
時代が電動化に向かわなければガソリン車に積まれる予定だったのだろうが、エクストレイルでは「発電」という黒子に徹している。
安定した走り
試乗車は最上級グレード「G」の4輪駆動モデルe-4ORCE。内装やデジタル式のインパネは高級感たっぷり。センターコンソールには電子式のシフトレバーと、路面状況に合わせて走行モードを切り替えるスイッチがある。
e-4ORCEは、前後二つのモーターと左右のブレーキを統合制御することでぬれた路面や雪道、ぬかるみなど、路面の状況を問わず最大の駆動力を発揮する。さらにコーナリングや減速時にも車体の動きを適切に制御するので、スムーズで安定した走りが得られる。
試乗の日は風が強く、時折、視界が遮られるほど強い雨が降る荒れ模様の天気だった。そんな緊張を強いられるような悪条件の試乗でエクストレイルは、終始安定した走りを提供してくれた。一般路はもちろん、速度域の高い高速道路もリラックスして走ることができた。
しなやかな足回り
エクストレイルで特筆したいのは、静かで滑らかな乗り心地だ。
日産のHVはエンジンの存在を極力隠し、まるでEVのように振る舞う。その工夫の一つが、路面が荒れている場所でエンジンを積極的に回し、バッテリーに蓄電する仕組み。外部からの騒音があるので、エンジン音が気にならない。逆に路面のいい場所ではエンジンを停止してバッテリーで走るので、室内はとても静か。
急な加速でモーターに大きな電力を供給する場面ではエンジンが回るが、遮音が行き届いているので軽やかな音がかすかに聞こえるだけだ。
足回りはとてもしなやかだ。路面の荒れた所ではざらつきを吸収し、車内に入ってくる騒音も少ない。マンホールのふたやアスファルトの補修跡を乗り越えた際の衝撃もソフトにいなしてくれる。路面の大きなうねりの乗り越え方はゆったりしていて、いかにも高級車という印象だ。
ドライブモードはオート、エコ、スポーツ、スノー、オフロードの切り替えが可能。市街地を走るには燃費重視のエコでも十分に力強い。そこからオートに切り替えてアクセルを踏めば、車がふわっと軽くなったように加速する。
エクストレイルは、同乗者にも快適な空間を提供してくれる。座り心地の良いリアシートにはシートヒーターが付いていて、運転席よりも座面が高いので見晴らしが良い。さらに窓が四角いので圧迫感が少ない。センターコンソールの後ろには、スマートフォンを充電するためのUSBポートも2つ付いている。
エクストレイルは7月25日の発売からわずか2週間で1万2千台の受注があったほどの人気。納期が長期化したため、11月下旬から受注を停止しているのが残念だ。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴47年。紀伊民報制作部長