7人乗りと5人乗り
シエンタは、小さめの車体に7人が乗れるミニバンとして2003年に誕生。15年発売の2代目は、個性的な顔つきと使い勝手の良さ、優れた燃費などで人気車になった。
新型は、一目でシエンタと分かるデザインを踏襲しながら、丸みのある親しみやすい外観にした。日常生活で扱いやすいように車体の全長(4260mm)、全幅(1695mm)は5ナンバーサイズを維持し、全高(1695mm)を20mm高くして室内空間を広げた。前席と後席との空間も先代より80mm拡大。居住性も向上した。2列シートの5人乗りと3列シートの7人乗りがあり、家族構成や使用目的によって選ぶことができる。
パワーユニットは、最高出力120馬力のガソリンエンジンとハイブリッド(HV)の2種類。HVには後輪をモーターで駆動するE-Four(四輪駆動)も設定されている。
車両本体価格は、前輪駆動5人乗りガソリン車の195万円~E-Fourの7人乗り310万8千円まで。
乗り降りが楽に
左右のスライドドアは開口部の高さを先代より60mm高い1200mmに設定。路面から330mmという低いフロアと合わせて、一段と乗り降りがしやすくなった。最上級グレードの「ハンズフリーデュアルパワースライドドア」は、キーを携帯した状態でフロントドア下側に足を出し入れするとスライドドアが自動で開閉する。買い物や育児で両手がふさがっているときに便利だ。
身長172cmのリポーターが運転ポジションを合わせた上で後部座席に座ると、膝前の空間は握り拳縦二つ半とたっぷりあり、頭上も二つ半の余裕がある。シートの座面がフロントシートより少し高いので圧迫感も少ない。
バックドアは開口部の高さを15mm拡大。車高を高くしたことで荷室も20mm高くなっており、子どもの送迎などで27インチの自転車を載せるのも楽になった。
フルモデルチェンジで安全装備も充実した。予防安全パッケージ「トヨタセーフティセンス」は、車両や歩行者、自転車に加えて自動二輪車を検知。また、道路を横断する歩行者や自転車の動きを先読みして近づき過ぎないようにステアリングやブレーキを補助する機能も備えている。
市街地でも低燃費
試乗車は、HVの中間グレード「G」。スタートはモーター駆動なので静か。5ナンバーサイズの車は運転しやすく、ガラスエリアが広いので視界もいい。走り出してまず伝わってくるのは、車体のしっかり感。その下で柔らかめの足回りがよく動いている。荒れた路面でもタイヤの当たりはソフトで、マンホールのふたを乗り越えた際もショックを上手に吸収してくれた。路面から伝わってくる騒音も少なめだ。操縦性は素直で、ステアリングを切った方向に車の向きがすっと変わる。
モーターの駆動には、瞬間的に大きな電力を供給できるバイポーラ型ニッケル水素電池を使っているので、アクセルを踏んだ際の反応が早い。急な発進や追い越し加速ではさすがにエンジン音が高まるが不快ではない。
高速道を時速70kmで巡航していると、エンジンがかかっているのかどうか分からないほど静かだ。直進安定性もまずまずだった。
試乗を開始する際に平均燃費計をリセットして、走行条件による燃費の推移をチェックしてみた。販売店を出て目指したのは紀勢自動車道・南紀田辺インターチェンジ(IC)。そこから上富田ICまで約10kmの燃費はリッター22kmだった。
トヨタのHVは高速道路よりも、発進と停止を繰り返す市街地の方が燃費がいい。渋滞気味の市街地で燃費計の数値がどんどん上がり、高速道路を下りてから約13kmを走って、通算ではリッター26kmまで伸びた。市街地走行だけだったら30kmに達するかもしれない。
新しいシエンタは、両側スライドドアによる使い勝手の良さや広い室内スペース、そして小回りが利く5ナンバーサイズであることから、ファミリーカーにはうってつけ。また、定年退職後に車での旅行を楽しんでいる、といった人にもいい車だと思う。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴47年。紀伊民報制作部長