新車試乗記

秀逸なシートアレンジ

ホンダ ステップワゴン

【スペック】

全長×全幅×全高=4830×1750×1845mm▽ホイールベース=2890mm▽車重=1840kg▽駆動方式=FF▽エンジン=1993cc水冷直列4気筒DOHC、107kW(145馬力)/6200回転、175Nm(17.8kg)/3500回転▽モーター=135kW(184馬力)/5000~6000回転、315Nm(32.1kg)/0~2000回転▽燃料消費率=19.5km(WLTCモード)▽トランスミッション=電気式無段変速機▽車両本体価格=384万6700円(e-HEVスパーダ・プレミアムライン7人乗り)

【試乗車提供】

ホンダカーズ田辺・稲成店
(田辺市稲成町46、0739・24・4500)

[2022年7月14日 UP]

 ホンダの新型ステップワゴンは、シンプルなデザインの「エアー」と、重厚な「スパーダ」の2シリーズを展開。2リットルエンジンで発電しモーターで車輪を駆動するe-HEVは静かで滑らかな走りが特徴。シートアレンジのしやすさもホンダならではだ。

シフトレバーがない


 ステップワゴンは、フィットから始まった優しい外観を受け継いでいる。パワーユニットは、1.5リットルガソリンターボエンジン(最高出力150馬力)と、2リットルエンジン(145馬力)で発電しモーター(184馬力)で車輪を駆動するe-HEVの2種類。
 今回の試乗車は、シリーズの最上級グレードとなるハイブリッドのe-HEVスパーダ・プレミアムライン(7人乗り)だった。
 最近の車は電子化が進み、いきなり乗り込んでも操作に戸惑うことが多い。ステップワゴンの運転席に座ってまず驚いたのは、シフトレバーがないこと。ダッシュボードにあるのはD(ドライブ)、N(ニュートラル)、R(後退)、P(パーキング)のボタン。運転操作の伝達を電気信号に置き換えるバイ・ワイヤ技術が使われており、シフトレバーだけでなくアクセルやパーキングブレーキなども電気製品のスイッチやつまみに相当する。それを理解していても、長年使い慣れたシフトレバーが手元にないという驚きは大きい。

強まった電動感


 Dボタンを押してアクセルを踏むと、ステップワゴンは滑らかに走り出した。e-HEVを初めて採用したフィットは、モーターで走っているにもかかわらずアクセルの踏み具合に応じて発電用エンジンの回転が上下し、あえて純粋なエンジン車のような感覚を演出していた。次に登場したヴェゼルで電動感が強まり、ステップワゴンはさらに滑らかになった。
 交通の流れに乗って走っていると、エンジンを意識することはあまりない。また、上り坂などで発電のためにエンジン回転が高まっても音質は軽やかだった。
 Dレンジでは、アクセルを戻したときの減速は緩やか。Bレンジに切り替えると減速を強めることができ、いわゆる「ワンペダルドライブ」的なアクセルワークができる。減速の強さはステアリングの減速セレクターで4段階に調節できる。
 乗り心地はふわふわせずしっかりしており、補修跡のある道路での衝撃も柔軟に受け止める。コーナリングは素直。急カーブでステアリングを切り込んでも車体の傾きは少なめで、背の低い乗用車と同じ感覚で運転できる。ハンドリングがいいので、車好きの人も運転を楽しめそうだ。
 高速道路の走行は、フロントガラスが大きいので開放感たっぷり。安全運転を支援するホンダセンシングが車線の中央を維持してくれるので、高速道路はほぼ車任せで走っていられる。走行中の室内騒音は静かだが、風切り音は少し大きめだった。

3列目も快適に


 シートアレンジは多彩で、操作もしやすい。7人乗りタイプの2列目シートは前後に大きくスライドするだけではなく、一つのレバーで左右のスライドも可能。
 2列目シートを足が組めるぐらいゆったり設定しても、3列目に大人の男性が十分に座れる広さを確保できる。また、3列目シートは着座位置が2列目よりも高くなっているので前方の見晴らしが良く、圧迫感が少ない。座面から床までの高さが十分にあるので、膝が持ち上がったような不自然な姿勢で座らなくて済む。
 荷室は、床が深くえぐれているので、定員乗車でも多くの荷物が載せられる。荷物をたくさん積むときには3列目シートをえぐれた場所に折り畳んで収納するが、秀逸なのはその操作のしやすさ。
 3列目シートの背もたれにあるひもを軽く上に引き上げると背もたれが前に倒れ、そのまま軽く引っ張り続けると座面と一体になってストンとくぼみに収まる。収納したシートを元に戻すのも簡単で、力もあまり要らない。この扱いやすさにはちょっと感動した。

リポータープロフィル

【長瀬稚春】 運転免許歴47年。紀伊民報制作部長