モーター出力を向上
シリーズは、基準車となるノートのほかオーラ、オーラ・ニスモ、ノート・オーテック・クロスオーバーがある。オーラは上質感、ニスモはスポーティーな走り、クロスオーバーは最低地上高を高くして未舗装路の走破性を高めるなど、それぞれ性格が異なる。
いずれもパワーユニットは、1・2リットルエンジンで発電し、モーターで車輪を駆動するeパワー。モーターの最高出力と最大トルクは、ノートが116馬力/28.6kgであるのに対して、オーラは136馬力/30.6kgに強化されている。
オーラの車体は、全長がノートと同じ4045mm、全幅は40mm広い1735mmとなっており、3ナンバーサイズとなる。この40mmは、膨らませたフェンダーのデザインとトレッド(車輪間距離)の拡大に割り当てられており、キャビンの寸法は変わらない。
大きく質感が向上しているのはインテリア。シフトノブの周りやインストルメントパネルの下側には木目調の素材を採用。ドアトリムやアームレストにはツイード調の織物をあしらっている。
シートは、ツイード調の織物と合皮のコンビネーション。レザーエディション(約9万円高)を選ぶと本革シートになる。多くの購入者が本革を選択するというところにオーラの性格が表れている。
リアシートも乗り心地が良く、膝前、頭上とも握り拳一つ半分の余裕がある。レザーエディションには大きめのセンターアームレストが付く。リアのUSB給電は1カ所。
運転支援機能の「プロパイロット」やナビのセットオプションには、ボーズ社のステレオが含まれている。ヘッドレストにスピーカーが仕込んであるユニークなスタイルで、耳元で音質に優れた楽曲が楽しめる。このセットオプションの価格は約40万円。各種オプションにアクセサリー、登録諸費用などを含めると、オーラの乗りだし価格はざっと350万円が目安になる。
どっしりした安定感
オーラは、モーターの出力がノートより大きく、動力性能が1ランク向上している。アクセルを踏むとモーター独特の大きなトルクがすっと立ち上がり、重厚感のある加速が味わえる。
ステアリングの手応えは重め。走りだしてすぐに、コンパクトな車体からは想像できないほどどっしりした安定感が伝わってくる。足回りは引き締められていて、マンホールや路面の補修跡などを通過すると少しゴツゴツした感じがする。
車幅はノートより40mm大きいが、室内の広さは同じ。それでも心なしか広く感じるのは、上質なインテリアのせいだろうか。
新型ノートで採用された第2世代のeパワーは、路面の荒れている所など、走行音が大きいときにエンジンを回して発電する仕組みなので、エンジンの存在をほとんど意識させない。急加速で大きな電力が必要になり、エンジン回転が高くなっても、遮音が行き届いているので室内は静かだ。
ドライブモードは、手元のスイッチでスポーツ、エコ、ノーマルの三つから選択可能。スポーツとエコは、アクセルを閉じるとブレーキがかかったように減速するワンペダル感覚の運転ができる。
通常の走行は、燃費に優れたエコモードで十分。スポーツモードに切り替えると、アクセルを踏んだときの加速や閉じたときの減速が強くなり、ゆったりしたイメージのオーラに似合わないほどスポーティーな車に変身する。下り坂でもアクセル操作だけで自在に加減速できるので、曲がりくねった山道の走行が楽しくなる。
ノーマルモードは一般のCVT(自動無段変速機)と同様に、アクセルを戻しても強い減速はしない。オートマ車の運転に慣れている人には違和感がないが、オーラに乗るならeパワーを使いこなしたい。
上級車からの乗り換えも
オーラは、高速道路の走行も快適だ。本線への合流でアクセルを強めに踏むと、力強い加速に合わせて発電用のエンジンが始動するが、音質は軽やか。駆動系の音が静かなので、相対的にタイヤが発生するロードノイズが耳に付くかもしれない。
プロパイロットのクルーズコントロールは速度調整が5km刻み。1kmごとに細かく設定できる車種もあるが、速度を変更するときに設定ボタンを押し続けなければならないのはかえって不便で、5kmごとの方が使いやすい。
運転席前面のインパネは、フラットな液晶メーターと大型ディスプレーが並ぶ先進的なデザイン。シフトレバーはパソコンのマウスのように握るタイプで、手元にオートブレーキホールドや電動パーキングブレーキのスイッチが配置されている。信号待ちでブレーキを保持した状態からの再発進もスムーズだ。
車幅が1700mmを超えているものの、基本が5ナンバーサイズなので、狭い道でも運転しやすい。また、ハッチバック車の中にはスタイルを重視して後方や斜め前方の視界が悪い車があるが、オーラはフロントとリアの三角窓が大きめになっていて視界がいい。
荷室は、コンパクトな車体としては十分な積載量がある。後部座席の背もたれは6対4に分割して前方に倒せるが、その場合には座面の所に大きめの段差ができる。
オーラは、内外装の仕上げや静かな室内、重厚な乗り心地も含めて「小さな高級車」そのもの。上級クラスの車から乗り換えても満足感が得られるだろう。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴46年。紀伊民報制作部長