3種類の動力源
HVは大きく分けて、出力の大きなモーターとエンジンが協調しながら走るストロングHV、小型のモーターが発進時などにエンジンを補助するマイルドHV、エンジンは発電を受け持ち、モーターで車輪を駆動するシリーズHVの3方式がある。
ストロングHVで実績があるのはトヨタ。これに対して日産やホンダはシリーズ方式を採用している。今回、トヨタのグループ会社であるダイハツがシリーズ方式を選択したのは、将来の軽自動車への採用も見据えての判断とも見られている。
ロッキーのパワーユニットはこれまで、最高出力98馬力のガソリンターボエンジン1種類だけだった。ダイハツはHVの商品化に当たって、熱効率に優れた1.2リットル直列3気筒エンジンを新開発。HVに発電用として搭載するとともに、前輪駆動(FF)のガソリン車にも採用した。これに伴いターボエンジンは四輪駆動モデル(4WD)専用となり、HVと1.2リットル自然吸気エンジンはFFのみの設定になった。
アクセルペダルで減速
ロッキーHVで最も興味があるのは動力性能と走行感覚。始動ボタンを押してアクセルを踏むと、バッテリー駆動のモーターで走りだし、すぐにエンジンがかかった。そこからするするとスピードが乗り、いつの間にか制限速度に達していた。
一定速度で走っているときのエンジンは、低い回転で発電しているので静かだ。ロッキーがデビューしたときに試乗したターボモデルも1リットルクラスの車としては静かだったが、HVはさらに遮音が行き届いている。
しかし、強めの発進加速や追い越し、上り坂などでアクセルを強く踏むと急にエンジン回転が上がり、車内に大きな音が飛び込んでくる。タコメーターが付いていないため正確な回転数は分からないが、4000回転ぐらい回っているのだろうか。
モーターならではのスムーズで力強い加速をしているのに、意識はどうしてもエンジンに向いてしまう。印象としては、初代のノートeパワーに近い動き。HVの機構を小型化するために、バッテリー容量も少なくしていることが影響しているのだろう。
ロッキーHVのもう一つの特長は、アクセルペダルを戻すとブレーキをかけたように減速するスマートペダル(Sペダル)の採用。減速の度合いはトヨタ・アクアの快感ペダルより強く、ノートのeパワードライブよりも弱い。
Sペダルは、ドライブモードをエコとノーマルに切り替え可能。ノーマルモードの走りは力強く、アクセルを戻したときの減速もエコモードより強い。下り坂でもブレーキを踏んだように減速するので、カーブの入り口で速度の調節がしやすい。
赤信号での停止も、アクセルペダルを戻して減速し、停止直前でブレーキを踏むだけ。のろのろ運転で先行車と車間距離を保つのもブレーキに踏み替える必要がないので楽だ。さらにオートブレーキホールド機能を備えているので、信号待ちや渋滞でブレーキから足を離しても停止状態を保持してくれる。
高速走行も快適
ロッキーHVの乗り心地はソフト。運転席のシートは左右の支えがしっかりしていて座りやすい。目線が高いので見切りも良く、運転しやすい。
市街地や郊外を一定速度で走っているときには室内は静か。このクラスでこれだけ遮音が行き届いていれば合格だろう。ただし、アクセルを強く踏み込んだときのエンジン音は大きく、ギャップがある。
高速道路の走行も1リットルクラスとしては快適だ。高速走行中はエンジンが発電を続けていたが、車内の騒音に影響はなかった。車線の中央を走るよう補助するレーンキープはこまめにステアリングを修正してくれるが、時々右や左に寄ってしまうなど、少しくせがあった。車自体の直進安定性がいいので、レーンキープをはずしても気持ちよく運転できた。
車体はコンパクトだが、後部座席のスペースは十分。身長172cmのリポーターに運転席を合わせて、膝前に握り拳縦一つ半、天井も一つ半の余裕があった。荷室は奥行きが755mmあり、容量も369リットルとたっぷりある。荷室のアンダーボックスは、FFのガソリン車では深くえぐれていて、買い物籠が二つ入るが、HVはバッテリーが収まるので浅くなっている。
HVの利点である燃費はどうなのだろうか。試乗車のカタログ燃費はガソリン1リットル当たり28.0km(WLTCモード)。試乗の最中、車載燃費計は常に25km前後を示していたから、実燃費はかなり良さそうだ。
ロッキーのグレード選択は、4WDに乗りたいのならターボ一択。価格はターボとHVが同等で、1.2リットルガソリン車(FF)はそれよりおよそ30万円安い。
モーターならではのスムーズな走りと燃費性能はHVの大きな魅力。一方で、手頃な価格で小型SUVを手に入れるのなら、ガソリン車も選択肢に入る。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴46年。紀伊民報制作部長