大きめでやや無骨
カローラクロスの車体は全長4490mm、全幅1825mm、全高1620mmで、1.5リットルクラスのヤリスクロス(4180×1765×1590mm)より一回り大きい。
同じ1.8リットルクラスの「C-HR」がクーペスタイルの都会型SUVであるのに対して、カローラクロスは同じ都会型でも、やや武骨な力強いスタイルを指向している。
パワーユニットは、1.8リットルエンジン(98馬力)とモーター(72馬力)を組み合わせたハイブリッド(HV)と、1.8リットル自然吸気エンジン(140馬力)を設定。HV車の燃費はガソリン1リットル当たり26.2kmと優秀。ガソリン車は14.4kmと平凡な数値だが、装備が簡素なグレードは199万9000円という安価な設定をしているのが魅力だ。
ガソリン車は全輪駆動(FF)のみの設定。HV車には、後輪をモーター(7.2馬力)で駆動する四輪駆動(E-Four)が設定されている。
初対面のカローラクロスは「カローラという名称が似つかわしくないほど立派」という印象を受けた。車幅がシリーズ中で最も広いことに加えて、全高が高いことで一段と大きく見える。
その余裕が最も表れているのはリアシート。弟分のヤリスクロスやC-HRに比べてずいぶん広い。身長172cmのリポーターに運転席を合わせて後部座席に乗り込むと、膝前には握り拳縦一つ分、天井は二つ分の余裕がある。リアシートは腰があってしっかりしており、座り心地がいい。センターアームレストにはドリンクホルダーを二つ装備。センターコンソールの後ろには後席用のエアコンの吹き出し口があり、スマートフォン充電用のUSB端子も二つ付いている。
荷室の容量は487リットルあり、奥行きも849mmと深い。リアシートを畳むと奥行きは1885mmに拡大するが、大きめの段差ができるのが残念だ。荷室のバックドアは、上級グレードは電動開閉式。キーを持った状態でバンパー下に足を入れると自動で開閉するハンズフリー機能も備える。
どっしりした安定感
試乗車はHVの最上級グレード「Z」のFF車。同じ1.8リットルのHVであるプリウスのシフトレバーは先進的なジョイスティック型だが、カローラクロスは一般的なレバー式。走行モードはセレクトスイッチでエコ、ノーマル、パワーの3段階を選ぶことができる。
アクセルを踏むとモーターで走りだし、スピードが上がるとスムーズにエンジンが始動する。その後はアクセルの開閉に合わせてモーターがエンジンをアシストする。走りだしてすぐに伝わってくるのは、どっしりとした安定感だ。追い越しで強めの加速をするとエンジンがうなりを上げるのはプリウスと一緒で、あまり気持ちのいいものではない。
先日試乗した新型アクアはモーターのアシストが強力で、一般道での追い越し加速はアクアの方が断然鋭かった。車重の関係もあるのだろうが、新しい電池の採用など、技術の進化を感じさせる部分だ。
ドライブモードを標準からエコに切り替えると、アクセルへの反応は穏やかになるが、ゆったりと郊外を流すにはいい。バッテリーの充電が十分なら時速60kmでもモーターで走り続けるので燃料の節約にも有利だ。試乗開始時点で車載燃費計はガソリン1リットル当たり22.7kmを表示し、試乗後はさらに伸びた。SUVとして燃費はかなり優秀だ。
足回りは柔らかめだが粘りがあり、ゆったりした乗り心地が得られる。操縦性は犠牲になっておらず、ステアリングの動きに合わせて車体がスムーズに向きを変える。車高が高い車特有の運転のしにくさは感じられなかった。
純正装着のタイヤはフランスのタイヤメーカー「ミシュラン」のプライマシー4。乗り心地が良く、走行音の静かなことで定評がある銘柄だ。力強い外観とは裏腹に快適性を重視したこの車の性格を表している。
モニターで安全確認
カローラクロスの車幅は1825mmあり、トヨタの最上級セダンであるクラウンより広いが、視界がいいのであまり車幅を意識しないで運転できる。
狭い道の運転で重宝したのは、試乗車にオプションで装着されていたパノラミックビューモニター。車を上方から見下ろした映像と、前方や後方のカメラ映像をディスプレーに映し出す機能。徐行の速度や停止状態になると自動で表示してくる。
前方は、ボンネットで視界が妨げられるフロントグリルの直前や、ボンネットの左右180度ぐらいまでが視野に入る。左右に塀がある路地から広い道に出る際に鼻先だけ出して安全確認をしたり、脱輪が心配な狭い山道で車輪の直前を確認しながら走ったりすることが可能だ。試乗車の写真撮影で河川敷に下りる際に、急な坂道の路面を確認するのに役立った。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴46年。紀伊民報制作部長