新車試乗記
個性それぞれ どれ選ぶ? 最新コンパクトカー比較
排気量1.5リットルクラスのコンパクトカーが人気だ。これまでに試乗したトヨタ、ホンダ、日産の新型車の特徴を比較したい。
[2021年5月13日 UP]
排気量1.5リットルクラスのコンパクトカーが人気だ。これまでに試乗したトヨタ、ホンダ、日産の新型車の特徴を比較したい。
[2021年5月13日 UP] コンパクトカー「ヴィッツ」のフルモデルチェンジを機に、海外での名称「ヤリス」に統一してイメージを一新。販売も従来のネッツ店から全てのトヨタ系販売店に広げた。
パワーユニットは、新開発の1.5リットル直列3気筒エンジン(最高出力91馬力)とモーター(80馬力)を組み合わせたハイブリッド(HV)と、1.5リットルガソリンエンジン(120馬力)、1リットルガソリンエンジン(69馬力)の3種類。
シャープなヘッドランプとボリュームたっぷりのリアフェンダーという躍動感あふれるデザインが目を引く。国内外のラリーでも活躍しており、スポーティーなイメージが定着している。
【ヤリスの○】
ヤリスの最大の特徴は「燃費モンスター」とも言える圧倒的な燃費性能。HVの燃費はガソリン1リットル当たり35.8km(ハイブリッドG、WLTCモード)と世界最高水準。これが単なるカタログデータではなく、実際の走行でも30kmを超える燃費を記録することができるのがすごい。
また、試乗して感心したのは、ガソリン車の燃費もいいこと。短時間の試乗だったが、市街地4割、高速道路6割の走行で、20kmを超える燃費をマークした。
コンパクトカーならではのきびきびとした操縦性もヤリスの持ち味。車体が軽いので加速性能にも優れる。
安全装備のトヨタセーフティセンスは、右折時の対向直進車や横断歩行者を検知するなど機能が充実。高速道路で先行車に追従走行するレーダークルーズコントロールが時速30㌔以下になると解除されてしまうのが弱点だったが、5月のマイナーチェンジで全車速追従型に変更された。
【ヤリスの△】
コンパクトな車体で、リアハッチの傾きも大きいので、室内、特に後部座席は狭い。大人が乗るのに不自由をするほどではないが、4人乗車で長距離を移動するのはちょっとつらい。1.5リットル3気筒エンジンは回転を上げるとやや騒がしく、室内に入ってくる騒音も大きめだ。
【データ】(ヤリスハイブリッドG)
全長×全幅×全高=3940×1695×1500mm▽ホイールベース=2550mm▽車重=1060kg▽駆動方式=前輪駆動▽エンジン=1490㏄直列3気筒DOHC、67kW(91馬力)/5500回転、122Nm(12.2kg)/3800~4800回転▽モーター=59kW(80馬力)、141Nm(14.4kg)▽トランスミッション=電子式無段変速機▽燃料消費率=35.8km(WLTCモード)▽車両本体価格=213万円
「心地よさ」をテーマに開発されたフィットは、穏やかな外観とソフトな乗り心地が持ち味だ。
パワーユニットはe:HEVと呼ばれるハイブリッド(HV)と、1.3リットルのガソリンエンジン(98馬力)の2種類。
e:HEVは、1.5リットルのエンジンで発電し、モーター(最高出力109馬力、最大トルク25.8kg)で走る。モーターの効率が悪い高速走行時にはエンジンとタイヤ駆動軸を直結して走るという凝ったメカニズムを採用している。
電気モーターならではの滑らかな加減速と、ソフトでどっしりとした乗り心地はコンパクトカーの水準を超え、一回り大きな車に乗っていると錯覚させるほど。
「ベーシック」「ホーム」「ネス」「クロスター」「リュクス」という生活スタイルに合わせた5種類のグレードを提案している。
【フィットの○】
コンパクトな車体からは想像できないほど広い室内と大きな荷室を実現し、しかもシートアレンジを含めた使い勝手がいい。
後部座席は、身長173cmのリポーターが座っても膝の前に握り拳が縦に二つ入るほどゆったりしていて、しかも座り心地もいい。座面は簡単な操作で跳ね上げることが可能で、背の高い荷物を積むのにも便利。
運転席からの視界が大きく開けているのもフィットの優れた点だ。フロントガラスを支える柱(Aピラー)が細く、インパネも平らで低いので、右左折時の死角がとても少ない。
また、電子制御パーキングブレーキを採用し、グルーズコントロールは全車速対応。ブレーキの自動保持機能もあるので、信号待ちの最中にブレーキペダルから足を離しても停止状態を保ってくれる。
【フィットの△】
e:HEVのモーターは2.5リットルガソリンエンジン並みの最大トルクを発生するが、アクセルをぐっと踏んでからモーターが反応するまでに少し時差があり、トルクの立ち上がりも穏やかなので、スポーティーで力強い加速を期待すると裏切られる。
安全運転支援システム「ホンダセンシング」は機能が充実しているが、高速道路などで後方から接近する車両を検知する機能と、駐車場からバックで出る際に後方左右から近づく車両を検知する機能がないのが残念だ。
【データ】(フィットe:HEVホーム)
全長×全幅×全高=3995×1695×1515mm▽ホイールベース=2530mm▽車重=1180kg▽駆動方式=FF▽エンジン=1496㏄水冷直列4気筒DOHC、72kW(98馬力)/5600~6400回転、127Nm(13.0kg)/4500~5000回転▽モーター=80kW(109馬力)/3500~8000回転、253Nm(25.8kg)/0~3000回転▽燃料消費率=28.8km(WLTCモード)▽トランスミッション=電気式無段変速機▽車両本体価格=206万8000円
フルモデルチェンジした新型ノートはハイブリッド(HV)専用車として誕生。エンジンで発電した電気をバッテリーに蓄え、モーターで車輪を駆動する第2世代のe-POWER(パワー)を搭載している。
モーターで走るのはホンダ・フィットと同様だが、ノートの方がより電動車に近い。発電用の1.2リットル3気筒エンジンは、走行音が大きいときに発電するよう巧みにプログラムされていて、走行中にエンジンを意識することがほとんどない。
【ノートの○】
最高出力116馬力、最大トルク28.6kgを発生するモーターはアクセルへの反応が鋭く、発進や追い越しの際に力強く加速する。また、アクセルを戻すだけでブレーキを踏んだのと同様の強い減速が得られるのもe-POWERならではの操縦性。カーブの連続する山道でもブレーキを使うことなく、アクセル操作だけでリズミカルに走ることができる。
オプションの運転支援システム「プロパイロット」は専用ナビと連携して、高速道路分岐点のカーブで減速するなど賢い制御をしてくれる。
室内の静粛性が高い上に、コンパクトカーを超えた安定感や乗り心地が得られ、上級車から乗り換えるダウンサイジングにもぴったりの車だ。
【ノートの△】
車両本体価格は上級グレードの「X」で約218万円と手頃だが、主要装備がオプションになっていて、割高に感じてしまうのがノートの泣き所。
高速道路で追従走行ができるプロパイロットは、専用ナビやアラウンドビューモニターなどとセットで42万円。プロパイロット単体では付けることができない。LEDヘッドランプや本革巻きステアリング、アルミホイールなどもオプション設定なので、欲しいものを加えていくと総額が300万円を超えてしまうこともある。
【データ】(ノートX)
全長×全幅×全高=4045×1695×1520mm▽ホイールベース=2580mm▽車重=1220kg▽駆動方式=FF▽発電用エンジン=1198cc水冷3気筒DOHC、60kW(82馬力)/6000回転、103Nm(10.5kg)/4800回転▽モーター=85kW(116馬力)2900~10341回転、280Nm(28.6kg)0~2900回転▽燃費=28.4km(WLTCモード)▽車両本体価格=218万6800円
【長瀬稚春】 運転免許歴46年。紀伊民報制作部長