新車試乗記

「安心」を凝縮

スバル レヴォーグ

【スペック】

 全長×全幅×全高=4755×1795×1500mm▽ホイールベース=2670mm▽車重=1550kg▽駆動方式=AWD(常時全輪駆動)▽エンジン=1795㏄水平対向4気筒DOHCターボ、130kW(177馬力)/5200~5600回転、300Nm(30.6kg)/1600~3600回転▽トランスミッション=CVT(自動無段変速機)▽燃料消費率=13.6km(WLTCモード)▽車両本体価格=332万2000円

【試乗車提供】

大阪スバル田辺店
(田辺市中万呂867-2、0739・23・1740)

[2021年2月18日 UP]

 2020-21日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したスバルの2代目レヴォーグに試乗した。がっしりした車体、先進の安全装備、新開発のエンジン、定評あるAWD(常時全輪駆動)などにより「安心」を凝縮した車だ。

進化したアイサイト


 初代レヴォーグは14年にレガシー・ツーリングワゴンの後継車種として登場。新型のSUV(スポーツ用多目的車)が続々と登場する中で、貴重なワゴンタイプとなっている。
 スバルは早くから衝突被害を軽減する安全装備「アイサイト」を開発し交通事故防止に取り組んできた。新型レヴォーグは、車の周辺360度を監視する新世代型のアイサイトを全車標準装備するとともに、運転支援機能を拡張した「アイサイトX」を搭載したグレードを設定した。
 同社の調べによると、アイサイト搭載車は非搭載車に比べて衝突事故発生率が84%減少したという。
 新しいアイサイトは、広角化したステレオカメラと車体の前後に取り付けた四つのレーダーを組み合わせて周囲を監視。見通しの悪い交差点や駐車場から発進する場合に横から接近する車を検知すると、警報音や緊急ブレーキで出合い頭の衝突回避を支援。前方の車両との衝突を緊急ブレーキだけでは避けられない場合には、システムが周囲に回避スペースがあると判断すれば自動でステアリングを切るよう制御する。
 この進化したアイサイトに、さらに高度な運転支援機能を加えたのがアイサイトXだ。3D高精度地図データに登録されている自動車専用道の車線単位の情報を活用。衛星を利用した自車の正確な位置情報と組み合わせ、渋滞時の自動発信・停止や手放し運転(時速0~50km)、高速走行時(時速約70~120km)の車線変更アシスト(ステアリング制御)、カーブや料金所手前での速度制御などを行う。
 アイサイトX搭載グレードは、標準のアイサイト搭載車に対して38万5千円高いが、購入者の9割はアイサイトX搭載グレードを選択するという。

新開発の1.8リットルエンジン


 先代のレヴォーグには1.6リットルターボエンジン(最高出力170馬力、最大トルク25.5キロ)と2リットルターボエンジン(300馬力、40.8kg)が設定されていたが、新型は1.8リットルターボエンジン(177馬力、30.6kg)に一本化された。1.6リットルエンジンと比べると、最高出力は7馬力のアップにとどまるが、最大トルクは5.1kgも向上した。
 さらに大きく変わったのはアクセルに対する反応。1.6リットルエンジンはアクセルを踏んでからターボの過給が始まり出力が出るまでにはっきりした遅れがあったが、1.8リットルエンジンは反応が早くなった。発進の際には注意していないと、気付かないうちに制限速度を超えていた、ということになってしまうほどスムーズで力がある。
 トランスミッションはCVT(自動無段変速機)だが、低回転域でのトルクが大きいので、上り坂でも急にエンジン回転が高まることがなくスムーズに走ることができる。レヴォーグの車重は1550~1570kgと決して軽くないが、アクセルを深く踏み込んだときの加速は「一般道ではこれ以上必要ないだろう」と感じるほど力強かった。
 このエンジンの弱点を強いて挙げるとすれば、ガソリン1リットル当たり13.6km(WLTCモード)という燃費。運転しているときには燃費のことを忘れさせてくれるほど気持ちのいいエンジンだが、給油の際には気になるかもしれない。

滑らかな乗り心地


 試乗車は中間グレードのGT-H(車両本体価格332万2千円)。販売店のスタッフによると、人気グレードは電子制御サスペンションやアイサイトXを搭載した最上級のSTIスポーツEX(409万2千円)だそうだ。400万円を超えるが「多くのユーザーがより安全な車を選択します」という。
 エンジンを始動すると、水平対向エンジン独特の音がかすかに響く。電子式のパーキングブレーキは、シートベルトをしてシフトレバーをドライブに入れていれば、アクセルを踏むだけで自動解除される。
 スバルの車はどれも前後左右の死角が少なく見切りがいい。ボンネットも見えるので、車幅の感覚がつかみやすく、狭い道でも運転しやすい。
 走りだしての第一印象は、静粛性が高く、車全体がしっかりしていること。AWDによる走行安定性も加わって、普通の道を普通に走っているだけで車体の剛性感や安心感が伝わってくる。
 足回りは、適度に引き締められているのにごつごつした感触はなく、サスペンションがよく動いているという印象。工事跡がたくさんある荒れた路面でも乗り心地がいい。試乗したGT-Hは標準のサスペンションだが、上位グレードのSTIは足回りを柔らかくしたり硬くしたりできる電子制御サスペンションを備えているので、さらに乗り心地はいいという。
 試乗当日は風が強く吹いていたが、風切り音はほとんど車内に入ってこなかった。強風が吹き抜ける場所に差し掛かってもステアリングを取られることはなく、車外の景色を見て風の強さを確認するほどだった。
 高速道路の本線に合流する場面では、強力な1.8リットルターボエンジンが頼りになる。本線の走行中は、アイサイトがアクセルやブレーキ、ステアリングの操作を補助してくれるので、リラックスして運転していられる。設定した速度で走行し、遅い車に追い付いたときの減速も滑らかだった。
 ブレーキの感触もいい。最近は、ブレーキペダルを軽く踏んだだけでもぎゅっと制動力が立ち上がるブレーキの車が多いが、レヴォーグは踏んだ力に比例して制動力が増していくタイプなのでコントロールしやすい。軽く利くブレーキに慣れている人は、走りだしで「ブレーキが甘い」と錯覚するかもしれない。

後部座席も快適に


 ワゴンならではの使い勝手もレヴォーグの魅力の一つだ。荷室容量はフロアボード上部だけでも492リットルあり、ボード下にはさらに69リットルのサブトランクが設けられている。サブトランクの深さは最大290mmあるので、鉢植えの植物など高さのある荷物も積むことができる。
 リアハッチは電動のハンズフリー。ガラスの下にあるスバルのオーナメントに体の一部を近づけると開く。ハッチのハンズフリーは、車体の下に足を差し入れて開けるタイプが多いが、レヴォーグは「片足立ちでバランスを崩さないように」と、あえて違う方式を採用したという。
 後部座席も、長距離移動に適した快適な空間になっている。シートのクッションは腰が強くてしっかりしており、体をしっかり支えてくれる。背もたれの傾きが大きめなので、体を預けてゆったり座ることができる。頭上の空間は、身長173cmのリポーターで握り拳が縦一つ半、膝前の余裕は縦一つ分。
 左右の座席の間にはアームレストがあり、ドリンクホルダーが二つ付いている。スマートフォンに充電ができるUSBポートも二つ装備。さらにエアコンの吹き出し口やシートヒーターも付いた「おもてなし仕様」なので、長時間の乗車も快適に過ごせそうだ。
 短時間の試乗だったが、安全装備、車体のしっかり感、乗り心地、静粛性のどれもが高い水準にあり、「安心して乗っていられる車」という印象を受けた。

リポータープロフィル

【長瀬稚春】 運転免許歴45年。紀伊民報制作部長