新車試乗記

スズキ ソリオ

【スペック】

全長×全幅×全高=3790×1645×1745mm▽ホイールベース=2480mm▽車重=1000kg▽駆動方式=FF▽エンジン=1242cc水冷4気筒DOHC、67kW(91馬力)/6000回転、118Nm(12.0kg)/4400回転▽モーター=2.3kW(3.1馬力)/1000回転、50Nm(5.1kg)/100回転▽トランスミッション=CVT▽燃料消費率=19.6km(WLTCモード)▽車両本体価格=202万2900円

【試乗車提供】

スズキアリーナ田辺・田辺スズキ販売
(田辺市下万呂567、0739・22・4416)

[2021年1月14日 UP]

 スズキは、排気量1・2リットルの小型ワゴン車「ソリオ」と「ソリオバンディット」をフルモデルチェンジし、昨年12月に発売した。車体を拡大して荷室を大きくし、静粛性や乗り心地も改善した。小回り性能など、小型ワゴンならではの取り回しの良さは維持している。

荷室を100mm拡大


 試乗車は、装備が充実したハイブリッドのMZ。乗り込むと、シートの座り心地が良く室内はとても広い。新型ソリオは、全長を先代モデルより80mm伸ばして3790mmに、全幅を20mm拡大して1645mmにした。それでも5ナンバーサイズ(全長4700mm、全幅1700mm以下)の乗用車としては小さい部類に入るが、室内の広さはそんなハンディを全く感じさせない。最小回転半径は先代の4.8mを維持しているので小回りが利く。
 全長を伸ばしたことで、荷室の奥行きを100mm拡大し、後部座席に人を乗せても十分な積載スペースを確保した。後部のシートは前後に165mmスライドするので、荷物の大きさに合わせて荷室の奥行きを550~715mmの間で調節することが可能。身長173㌢のリポーターが運転席を調節してから後部座席に座ると、シートを一番前にスライドした位置でも膝の前に握りこぶし縦一つ分の余裕があった。背もたれを前に倒すとフラットな空間ができるので、より多くの荷物を積むことができる。
 後部座席の座面は、前席より少し高いシアタータイプなので見晴らしが良く、圧迫感なく座ることができる。最大で56度まで背もたれを傾けることができるリクライニング機構も付いている。
 外観は、フード先端を先代より持ち上げることでフロントマスクの厚みを増し、存在感を強調している。個性的な外装を与えたバンディットは、ポジションランプとヘッドランプを2段に配置し、立体感のある面構えにしている。
 後席のパワースライドドアには今回、予約ロック機能が追加された。スライドドアは狭い場所でも乗り降りがしやすい半面、降車の際にはドアが閉まるのを待つのがもどかしかった。予約ロック機能は、ドアが閉まるのを待たずに携帯リモコンでロックを予約でき、全閉後に自動的に施錠されるので便利だ。

静かでソフトな乗り心地


 運転席に座るとまず目に入ってくるのが9インチの大きなディスプレー。エンジンスイッチを押すと、車の周囲をぐるりと映し出してくれるので安全確認がしやすい。駐車の際も、後方を映すバックモニターと周囲を映すビューモニターの映像を2分割で同時に表示してくれる。映像もくっきり見やすかった。
 走行スピードや燃費などを映し出すマルチインフォメーションディスプレーは、運転席の正面ではなくインパネの中央に設置されている「センターメーター」という方式だが、視線を左に移さなければならないので慣れるまで見にくい。試乗したハイブリッドMZは、ダッシュボードの上に速度やエンジン回転、シフト位置などをカラーで映し出すヘッドアップディスプレーを備えており、こちらは視線の移動が少なくて見やすかった。
 パワーユニットは1.2リットル直列4気筒の自然吸気エンジンで、最高出力91馬力、最大トルク12.0kgを発生する。ハイブリッドのモデルは、それを3.1馬力、5.1kgの小型モーターで補助する。モーターの出力は小さいが、発進時に5.1kgのトルクが加わる効果は大きく、走りだしは滑らかで力強い。また、アイドリングストップからの再始動もセルモーターの「キュルキュル」という音がないので静かでスムーズだ。
 このエンジンは、トルクではなく回転でパワーをかせぐタイプ。強めにアクセルを踏んだ時の排気音は軽快で、上り坂でも力不足を感じることはなかった。
 走行中の室内は先代モデルよりずいぶん静かになった。ボンネットを開けると、エンジンルームとキャビンの間には吸音材が装着されていた。また、構造用接着剤を利用して車体の強度を上げたり、屋根に当たる雨音を低減する処置を施したりしているという。
 最近は、足回りを引き締めたごつごつした乗り心地の車が多いが、ソリオはソフトな設定。マンホールの上を通過した時にも、タイヤとの間にゴムシートを1枚はさんだようなソフトな感触でいなしてくれる。
 安全装備も充実した。衝突被害軽減ブレーキは夜間の歩行者も検知。高速道路などで走行速度を自動調節するアダプティブクルーズコントロール(ACC)は全車速対応に進化した。

天井にはサーキュレーター


 車内の使い勝手は、軽自動車で培われたスズキのノウハウが注ぎ込まれている。収納は、助手席シートアンダーボックスや運転席シートサイドポケット、荷室のショッピングフックなど15種類にも及ぶ。
 運転席と助手席のカップホルダーは、上半分が四角くて底が丸いので、コーヒーカップやペットボトルだけでなく、牛乳パックのような四角い容器も置くことが可能。運転席と助手席の背面には折り畳み式のテーブルがあり、それぞれカップホルダーが2個ずつ付いている。ファミリーでの利用に便利だろう。
 運転席と助手席の間には通路があるので、運転席から助手席側に移動して乗り降りしたり、ウオークスルーで後部座席に移動したりできる。
 室内の天井は高く、後部座席の頭上空間は握りこぶし縦三つ分あった。天井にはサーキュレーター(扇風機)が付いているので、夏の冷房や冬の暖房の空気を前席から後席に流すことができる。
 スマートフォンの充電などに使えるUSBのソケットはフロントに二つ。また、12ボルトのアクセサリーソケットが後部座席にもあり、こちらはスマホの充電だけでなく、リアにドライブレコーダーを設置する際の電源にも使えそうだ。
 このクラスでは、ライバルであるトヨタのルーミーやダイハツのトールも販売が好調。軽のハイトワゴンでは小さいが、ミニバンでは日常使うには大き過ぎるというユーザーには、ソリオの大きさと使い勝手はぴったりだ。

リポータープロフィル

【長瀬稚春】 運転免許歴45年。紀伊民報制作部長