高級SUVの元祖
初代ハリアーは、SUVがまだ一般的ではなかった時期の登場だけに個性的だった。全長4575mm、全幅1815mm、全高1665mmの車体は当時の乗用車としては巨大で、運転席からの視界はトラックのように高く感じた。SUVといえば「オフロードを走る車」というイメージが強かった中で、「スーツを着て乗ることができるSUV」は新鮮だった。
4代目はその伝統を受け継ぎ、内外装や性能、機能に一段と磨きをかけた。外観のデザインは、絞り込まれたキャビンと張り出したリアフェンダーにより、スポーティーでありながら端正なスタイルを強調している。オフロード指向のSUV「RAV4」が角張ったスタイルで力強さを打ち出しているのと対照的だ。
車体の大きさは全長4740mm、全幅1855mm、全高1660mmで、日本の道路事情を考えればかなり大柄なサイズになる。しかし実際に運転してみると、目線が高くて視界がいいので、一回り小さい車のように扱える。
パワーユニットは、最高出力178馬力、最大トルク22.5kgの2.5リットルエンジンとモーター(120馬力、20.6kg)を組み合わせたハイブリッド(HV)と、最高出力171馬力、最大トルク21.1kgの2リットルガソリンエンジンの2種類。WLTCモードの燃費は、HVが22.3km、ガソリン車が15.4kmと、いずれも優秀だ。
車両本体価格はFF(前輪駆動)ガソリン車の299万円から4WD(四輪駆動)HVの504万円までとなっている。
上質な室内
試乗車は、HVの上級グレードZのFFモデル。さすがにこのクラスになると、内装は高級感たっぷりだ。シートは黒いファブリックと合成皮革、センターコンソールは濃いブラウンをあしらっている。運転席に座ってまず目に飛び込んでくるのは12.3インチの大型ディスプレー。ナビやオーディオ機能、ETC2.0ユニットを搭載し、文字は大きくて見やすい。オーディオには、九つのスピーカーを配置したJBLプレミアムサウンドシステムを採用している。
ルームミラーは、通常の鏡面と、車両後方に取り付けたカメラの映像を映し出すデジタルインナーミラーとの切り替えができる。デジタルインナーミラーは、後部座席の乗員や荷物に遮られずに後方を確認することが可能。録画機能も付いているので、ドライブレコーダーの役割も果たす。
インパネの7インチの液晶画面は、右側に大きなスピードメーター、中央に各種情報表示、左側はHVのシステムインジケーターになっている。試乗車は、車速やナビのルート案内をフロントガラスに映し出すカラーヘッドアップディスプレーを装備していたので、走行中も視線をずらさずに速度の確認をすることができた。
後部座席は背もたれが寝ていて、深く腰掛けるタイプ。膝前にこぶし縦二つ分、頭上も二つ分の余裕があり、ゆったり座ることができる。少し体が沈み気味になるが、窓の面積が広いので圧迫感はなかった。
安全装備は、歩行者(昼夜)や自転車運転者(昼間)を検知する予防安全機能「トヨタ・セーフティー・センス」に加えて、アクセルの踏み間違いによる衝突被害を軽減するインテリジェントクリアランスソナーや、後退時に後方左右から接近してくる車を検知するリヤクロストラフィックオートブレーキなどを備えている。
快適な高速クルーズ
2.5リットルエンジンをベースにしたHVシステムは総合出力が218馬力あり、ゆったり走りだしたつもりなのにすぐに制限速度に達してしまう加速力を持っている。速度計に注意していないと、意図せずにスピード違反をしていたということになりかねないようなスムーズさ。運転席の目線が高いこともスピード感がない一因かもしれない。
走行中の室内は高級SUVにふさわしい静かさで、路面の荒れた場所でも急に騒音が大きくなるようなことがない。小型車なら「ゴゴゴゴ」というロードノイズと振動が入ってくるような路面でも「シャー」という耳障りでない軽い音に軽減されていた。足回りは少し引き締められているが、路面を問わず滑らかに動く。また、エンジンがかかったときとかかっていないときの騒音の差もほとんどない。
ドライブモードはエコ、ノーマル、スポーツの3種類。トヨタの1.8リットルHVはエコモードにすると加速が緩慢になり過ぎるが、この2.5リットルHVはエコモードでも十分な力がある。
これをスポーツモードにすると、エンジンとモーターが協調してアクセルへの反応が一気に鋭くなる。エンジン回転も高めに保つので、制限速度に達するのは一瞬。しかもそこに至るまでの加速は相変わらず滑らかだ。急な上り坂に差し掛かってもぐいぐい加速し、とても力強い。
高速道路の走行もハリアーの得意種目だ。クルーズコントロールをセットし、JBLの音響システムから流れてくる音楽を楽しみながらステアリングに軽く手を添えていればいい。走行音が静かで足回りの動きも滑らかなので、リラックスして高速クルーズを楽しめる。
新型ハリアーは6月の発売から1カ月間で、月間販売目標3100台に対して4万5千台を受注した。10月の新車販売ランキングは9674台で、乗用車の6位。この人気は当分続きそうだ。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴45年。紀伊民報制作部長