新車試乗記

ダイハツ タフト

【スペック】

全長×全幅×全高=3395×1475×1630mm▽ホイールベース=2460mm▽車重=840kg▽駆動方式=FF▽エンジン=658cc水冷3気筒DOHCターボ、47kW(64馬力)/6400回転、100Nm(10.2kg)/3600回転▽燃料消費率=20.2km(WLTCモード)▽トランスミッション=CVT▽車両本体価格=160万6千円

【試乗車提供】

田辺ダイハツ販売
(田辺市東山1丁目、0739・22・2323)

[2020年7月9日 UP]

 ダイハツは、日常からレジャーまで使える新型軽乗用車「タフト」を発売した。角張った個性的なデザインと、前席の天井をガラスにしたスカイフィールトップの全車標準装備などが特徴。ライバルは、スズキのSUV(スポーツ用多目的車)「ハスラー」や本格的な四輪駆動車(4WD)「ジムニー」だという。

角張ったスタイル


 ダイハツは、鉄板をむき出しにしたようなユニークなデザインの軽乗用車「ネイキッド」(1999~2004年)や本格的な軽4WD「テリオスキッド」(1998~2012年)を販売していたが、いずれも既に生産を終了。タフトは、人気が高まるSUV市場に発売された全くの新型車だ。
 まず目を引くのは、その武骨なデザイン。直線で構成された角張った外観はどことなく、軍用車を民間仕様にしたアメリカの4WD「ハマー」に似ている。特に、フロントグリルにディーラーオプションのメッキパックを装着すると雰囲気が出る。
 前後のフェンダーには黒い大きめのガードがあり、165/65/15の大径タイヤを履く。最低地上高は、未舗装路で車体下部をこすらないように190mmを確保している。
 ぬかるんだ道や雪道での走行性能を高めるグリップサポート制御を搭載。滑りやすい場所で片輪が空転したときには、空転した側の車輪にブレーキをかけてもう片輪に駆動を伝える仕組みだ。ただし、ライバルに挙げるジムニーのパートタイム4WDのような、本格的なオフロード機能は備えていない。
 エンジンは最高出力52馬力の自然吸気エンジンと、64馬力のターボエンジン。駆動方式は、FF(前輪駆動)とフルタイム4WDを設定。トランスミッションはCVT(無段自動変速機)のみで、手動ミッションは選べない。

ガラスルーフが標準


 試乗車は、一番人気のグレードであるGターボのFFモデル。色はアウトドアのイメージが強いフォレストカーキメタリック。女性には、明るいサンドベージュメタリックが人気という。
 自慢のスカイフィールトップは、前席の頭上がガラスになっている。このガラスは固定で、天井のシェード(覆い)は手動で開け閉めする。シェードを全開にすると開放感たっぷりだが、試乗の日は快晴だったので、ガラス越しの日差しが目に入りまぶしかった。試乗中に具合が良かったのは半開き。開放感と日よけのバランスが取れていた。
 着座位置が高めということもあるのだろうが、シェードを完全に閉めてしまうとルーフの先端が視野に入り、少し圧迫感があった。これは体格による個人差もあるだろう。
 室内は、運転席からフロントウインドーまでの距離があり、デザインも直線基調なので広く感じる。内装の色は前席が黒と濃いグレー、後席はそれよりやや薄いグレーを基調にして雰囲気を切り替えている。シートにはオレンジのステッチ、メーターやシフトレバー、エアコン吹き出し口の周りにはオレンジメタリックの加色が施されている。この色は個性が強いので、好みが分かれそうだ。
 シートは支えがしっかりしていて座り心地がいいが、もう少し座面が広いと男性はさらに座りやすい。
 荷室の床は、汚れた場合に拭き取りやすい素材を採用。フレキシブルボードを下げたり立てたりすることで深さを調節することができる。後部座席の背面にも汚れにくい素材を使っており、前に倒せば荷室がフラットになる。
 タントのようなリアシートのスライド機能はないので、荷室の奥行きは固定。使う場面に応じて荷室の広さを調節することはできない。リアシートの背もたれを前に倒して荷室の床を平らにした場合も、床と前席の背もたれとの間に大きな隙間ができてしまうので、ブレーキを掛けた際に荷物が後席足元に落ちることもありそう。オプションで荷物を押さえるラゲージネットも用意されているが、隙間がないに越したことはない。
 64馬力のターボエンジンは低回転から力があり、発進加速は気持ちいい。坂道もぐいぐい上り、力不足を感じることはなかった。
 最低地上高が高くて車高も高いが、操縦性は素直。外見はSUVだが一般の軽ハイトワゴンと同じ感覚で運転することができる。ダイハツの新しい車づくりであるDNGAのプラットホーム(車台)が採用されており、車体の剛性感が伝わってくる。

電動パーキングブレーキ採用


 タフトには、ダイハツで初の電動パーキングブレーキが採用された。指先だけで操作でき、さらにオートモードにしておけばシフトレバーをP(パーキング)に入れるだけで動作する。発進の際にはアクセルを踏めば自動的に解除される。またブレーキの自動保持をONにしておけば、渋滞や信号待ちなどでブレーキを踏んで停車した後、ペダルから足を離してもブレーキが保持される。
 これは、ターボ車に標準装備の全車速対応ACC(オートクルーズコントロール)との組み合わせでも効果を発揮する。全車速対応ACCは、高速道路で先行車と一定の車間距離を取って走行し、渋滞で先行車が停止すれば、ブレーキを踏まなくても停止。オートブレーキホールド機能が停止状態を保持してくれる。ACCは、自然吸気のGにもオプション装着できる。
 新型車が出るたびに安全装備は充実しており、タフトも17種類の予防安全機能を搭載している。ステレオカメラの刷新やセンサーの変更により、夜間の歩行者検知に対応した。

ライバルはスズキの2車


 タフトのライバルに挙げられているのは、スズキのハスラーとジムニー。「本格的なオフロード車であるジムニーがどうして?」という疑問もあるが、ジムニーのスタイルや雰囲気に憧れている層を狙ったものだろう。ジムニーは受注に生産が追い付かず、注文しても納車まで1年はかかるとされているので、下取り車の車検や納車のタイミングも含めてタフトが選択肢に入る。
 ハスラーとの比較では、両車とも全車速対応のACCを装備しているが、タフトは電動パーキングブレーキを装備しているので、前の車が停止した場合に停止状態を自動で保持してくれる。ハスラーにその機能はない。また、ハスラーはターボ車にしかACCが付かないが、タフトは自然吸気のGグレードにオプションで装着できる。
 オフロードの走破性では、ハスラーは、急な下り坂でブレーキを踏まなくても車速を時速7km以下に保つヒルディセントコントロールや、雪道やアイスバーンの発進でスリップを抑えるスノーモードを装備しているが、タフトにはない。
 シートアレンジでは、リアシートがスライドできるハスラーは荷室の広さを調節する自由度がある。

リポータープロフィル

【長瀬稚春】 運転免許歴45年。紀伊民報制作部長