新車試乗記

スズキ ハスラー ハイブリッドX

【スペック】

(かっこ内はGターボ)
全長×全幅×全高=3395×1475×1680mm▽ホイールベース=2460mm▽車重=820kg▽駆動方式=FF▽エンジン=657cc水冷3気筒DOHC(658cc水冷3気筒DOHCターボ)、36kW、49馬力/6500回転(47kW、64馬力/6000回転)、58Nm、5.9kg/5000回転(98Nm、10.0kg/3000回転)▽モーター=1.9kW、2.6馬力/1500回転(2.3kW、3.1馬力/1000回転)、40Nm、4.1kg/100回転(50Nm、5.1kg/100回転)▽トランスミッション=CVT▽燃料消費率=25.0km(22.6km)WLTCモード▽車両本体価格=151万8千円(145万9700円)

【試乗車提供】

スズキアリーナ田辺・田辺スズキ販売
(田辺市下万呂567、0739・22・4416)

[2020年2月13日 UP]

 スズキは、2014年に登場して新ジャンルを切り開いた軽乗用車「ハスラー」をフルモデルチェンジした。2代目は、丸形のヘッドライトなど、一目でハスラーと分かる個性的なデザインを継承。新しいプラットホーム(車台)の採用で静粛性や走りの質に磨きを掛けた。

エンジンも新開発


 初代ハスラーはSUV(スポーツ用多目的車)と軽ワゴンを融合させた斬新な企画と使い勝手の良さ、かわいらしいデザインから累計48万台を販売するヒット車種になった。
 2代目は、初代のデザインを継承しながらやや角張ったスタイルになったが、実車を見ると相変わらずかわいらしい。それでいて最低地上高180mmを確保し、不整地でも車体下部をぶつけにくくするなど本格的な悪路走行に対応。四輪駆動車(4WD)は、ぬかるみの脱出が容易なグリップコントロールや急な下り坂でブレーキを踏まなくても時速7kmを維持してくれるヒルディセントコントロールなど、本格的な悪路走破性を備えている。
 内装のデザインも個性的だ。インパネは三つの枠で仕切られ、右側がメーター類、中央がナビの画面、左が収納箱になっている。ボディーカラーはモノトーンが5色、屋根の色を塗り分けたツートーンカラーが6色用意されている。
 車種構成はシンプル。ベースグレードの「G」と装備が充実した「X」があり、それぞれ自然吸気エンジンとターボエンジンを設定。いずれのグレードも前輪駆動(FF)と4WDが選べる。
 GとXの主な違いは、ヘッドランプ(Gはハロゲン、XはLED)、フォグランプ(Xに標準)、ホイール(Gはスチール、Xはアルミ)、ステアリング(Gはウレタン、Xは本革巻き)など。
 また、先行車と一定の車間距離を保ちながら加減速し、停止までカバーするアダプティブクルーズコントロール(ACC)と車線逸脱抑制制御はターボ車のみの設定。自然吸気エンジン搭載のグレードではオプションでも選べない。
 自然吸気エンジンは、新開発のR06D型を採用。最高出力は従来型より3馬力低い49馬力だが、低速から中高速まで、実用域での動力性能と燃費性能を高めた。このエンジンを最高出力2.6馬力のモーターが補助するマイルドハイブリッドとしている。ターボエンジンは最高出力64馬力を発生。これを3.1馬力のモーターが補助する。

乗り心地が大きく進化


 最初に試乗したのは自然吸気エンジンのX。メーカーオプションの全方位モニター付きメモリーナビゲーションを装着しており、エンジンを始動すると9インチの大きな画面に車の周囲がぐるりと映し出された。運転席から見えにくい障害物や背の低い子ども、ペットなども確認できるので安心だ。シフトレバーに連動して、バックに入れると後方の画像、ドライブに切り替えると前方の画像が映し出されるので、狭い駐車場での切り返しなどに便利だ。
 四角いデザインなので視界が良く、ボンネットが見えるので車幅の感覚もつかみやすい。先代よりホイールベースが35mm延長され、それがそのまま室内の広さに反映されている。
 スタートは、モーターのアシストもあって静かでスムーズだ。自然吸気エンジンの出力は従来より3馬力低くなったが、実際の走行ではむしろ力強くなったように感じる。街乗りで使うのなら自然吸気でも十分な動力性能が得られる。アイドリングストップからの再始動が静かなのもマイルドハイブリッドの長所だ。
 室内は静かだ。路面が荒れた場所に差し掛かっても、室内に入り込んでくる騒音は急激には大きくならない。防音材・遮音材の最適配置や、こもり音を低減する工夫をしており、軽自動車ではトップクラスの静粛性を実現している。
 軽量で剛性の高いプラットフォーム「ハーテクト」の採用により、運転していても車体のしっかり感が伝わってくる。サスペンションはストロークが長く、路面からのショックをよく吸収してくれる。操縦性も素直だ。車高が高めなので急カーブではアンダーステアが出るが、コーナリングを楽しむ車でないので不満を感じることはない。先代に比べて乗り心地や快適性は大きく進化した。
 後部座席も広く、スライド式のシートを一番前に出し、荷室を最大にした状態でも大人が余裕で座ることができる。シートを最も後ろに下げると、足を組めるほどのスペースができる。シートの前後スライドや背もたれを倒す操作は荷室側からできるので使い勝手もいい。
 荷室の床や後席背面は、ぬれたり汚れたりした物を積んでもふき取りやすい素材を採用。さらに荷室下には防汚タイプのアンダーボックスを備えている。アウトドア派にはうれしい仕様だ。

ターボにはACCを装備


 ターボの試乗車は、装備がシンプルなGグレード。アクセルをじわっと踏むと、エンジン回転を低めに抑えながら、大きなトルクを生かして加速する。動力性能は明らかに上手だ。
 もっとターボらしさを味わいたいのなら、パワーモードを利用するといい。スイッチ一つで性格ががらりと変わる。アクセルの踏み具合に対するエンジンの反応が鋭くなり、エンジン回転も高めに保たれる。燃費を気にせずハイパワーモデルに乗っている充実感を味わいたいのなら、パワーモードに固定しておくのもありかもしれない。
 ターボモデルは、先行車に追従走行するACCが標準装備されているので、阪和道や紀勢道など片側1車線の高速道路で運転が楽だ。便利な機能が自然吸気エンジン搭載車にはオプションでも装着できないのは残念だ。
 ターボモデルと自然吸気モデルの価格差は、同グレードでおよそ10万円。エンジン以外の装備の差はACCと車線逸脱抑制機能、パドルシフト。一方で、自然吸気で充実装備のXと、装備がシンプルなGターボを比較すると、Gターボの方が5万8千円安い。他の装備を我慢してACCを優先するのも選択肢の一つだ。

リポータープロフィル

【長瀬稚春】 運転免許歴44年。紀伊民報制作部長