充実した安全装備
N-WGNには標準仕様とカスタムの2シリーズがあり、それぞれ自然吸気エンジンとターボエンジンが設定されている。試乗では、標準仕様のLとカスタムのLターボを乗り比べた。
近年の自動車デザインは、大きなフロントグリルや細長いヘッドライトによる力強い顔つきが主流になっているが、N-WGNは穏やかな表情をしている。
標準仕様は、丸形ヘッドライトの優しい顔つき。カスタムは角形のヘッドライトを採用し、バンパーも直線基調としているが、それでもN-BOXカスタムや他社のカスタム系の車に比べるとおとなしい。
自然吸気エンジンは最高出力58馬力、最大トルク6.6kgを発生。軽自動車の自然吸気エンジンとしては出力が高く、その発生回転も7300回転という高回転型だ。
ターボは64馬力の最高出力を6000回転、10.6kgの最大トルクを2600回転で発生する。スペックからは低回転で力のあるタイプに見えるが、実際には低速からもりもりトルクが立ち上がるのではなく、高回転まで回した時に力を発揮する。
内装は、標準仕様はブラウンを基調にアイボリーをあしらった明るく落ち着いた仕上がり。カスタムは黒を基調にしたスポーティーなイメージでまとめている。
安全運転を支援するホンダセンシングは10の機能がある。衝突軽減ブレーキは横断する自転車に対応しているほか、街灯のない夜間の歩行者も検知。先行車との車間距離を適切に保つACCは停止まで動作し、高速道路での渋滞などで疲労を軽減してくれる。
車両本体価格は、標準仕様が127万4400円(G、前輪駆動)~163万1880円(Lターボ、四輪駆動)、カスタムが151万2000円(G、前輪駆動)~179万3880円(Lターボ、四輪駆動)となっている。
足が組める後部座席
最初に試乗したのは標準仕様のLグレード。ドアの開閉で軽自動車らしからぬしっかりした音がしたので、期待して乗り込んだ。
着座位置は、乗用車タイプとスーパーハイトワゴンのちょうど中間。窓の面積が大きいので前後、左右ともに視界がいい。足回りは柔らかめ。ステアリングの感触も含めてがつがつ走るのではなく、ゆったり走るソフトな車という印象だ。
エンジン音は静かで、路面のいい場所では室内に入り込んでくるロードノイズも小さい。とはいえ軽自動車の遮音には限度があるので、路面が荒れている場所でのロードノイズはそれなりに大きくなる。
軽自動車としては珍しくアクセルの位置が右寄りにセットされているので、右足を自然に伸ばした姿勢で運転できる。これはアクセルとブレーキの踏み間違い防止や疲労軽減につながるのでありがたい。
室内は、ホンダ独自のセンタータンクレイアウトによりとても広い。後部座席はスライド式のシートを一番前に出しても、身長173cmの男性が膝がつかえずに座れる広さ。最後部にセットすれば、足を組めるほどの空間が広がる。
荷室は床が低く、備え付けのボードで上下2段に仕切って使える、小物が収納しやすく、たくさん荷物が積めるので便利だ。仕切った状態で後部座席の背もたれを前に倒すと、上の段と背もたれが同じ高さになり、大きな荷物をスムーズに積むことができる。ボードをたためば、高さのある荷物が積める。
カスタムターボは別格
カスタムLターボは、車両本体価格が高い分だけ目に見えない部分にもコストをかけており、標準仕様とは「別の車」と言っていいほどの違いがある。
外観や内装だけでなく、操縦性や乗り心地がずいぶん違う。足回りは適度に引き締められており、標準仕様で感じたふわふわした感触はない。それでいて、乗り心地は損なわれていない。
カーブでの車体の傾き(ロール)を抑えるスタビライザーをリアサスペンションにも装着しているので安定感が増し、車体が外側に引っ張られるアンダーステアも標準仕様より小さい。車内の騒音も、標準仕様より小さく感じる。
ターボエンジンはトルクがたっぷりあるので、追い越し加速は小型車並みに機敏。上り坂も、アクセルを少し踏み増すだけでスムーズに上る。シートも標準仕様よりしっかり造られている。
こういった標準仕様とカスタムターボの格差は、ベストセラーであるN-BOXも同様だ。N-WGN、N-BOXの購入に当たって予算が許されるのなら、カスタムターボを薦めたい。
一方で標準仕様のN-WGNは手頃な価格が魅力。ホンダセンシングが標準で、装備の充実したLグレードが130万円台というのはお買い得だ。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴44年。紀伊民報制作部長