新車試乗記

マツダ CX-30

【スペック】

(XD・Lパッケージ)全長×全幅×全高=4395×1795×1540mm▽ホイールベース=2655mm▽車重=1460kg▽駆動方式=FF▽エンジン=1756cc水冷4気筒DOHC直噴ターボディーゼル、85kW(116馬力)/4000回転、270Nm(27.5kg)/1600~2600回転▽燃料消費率=19.2km(WLTCモード)▽トランスミッション=6AT▽車両本体価格=306万9000円

【試乗車提供】

和歌山マツダ田辺店
(田辺市新庄町2157、0739・22・8535)

[2019年11月14日 UP]

 マツダの新型SUV(スポーツ用多目的車)CX-30に試乗した。先行したマツダ3(セダン、ハッチバック)と共通の曲面で構成する車体デザインを採用。市街地でも取り回しのよい大きさや広い室内など、日常の扱いやすさを追求した車だ。

CX-5の弟分


 CX-30は、コンパクトカーであるデミオ(マツダ2)をベースにしたCX-3(1.8~2リットル)と、大柄なSUVであるCX-5(2~2.5リットル)の中間に位置する。
 全長4395mm、全幅1795mm、全高1540mmというサイズはCX-5に比べて全長で150mm、全幅で45mm小さく、全高で150mm低い。全高は、立体駐車場が使える1550mm以下を目安に設定したという。
 デザインは、マツダ3と共通の滑らかな面で構成。車体側面のキャラクターライン(線)を廃止することで周囲の光を映し込み、見る角度によってさまざまに表情を変える。車高が高いSUVだが、黒い樹脂で車体下部やフェンダーを覆うことで腰高に見えないように工夫している。
 内装の仕上げは上質で、高級感がある。試乗したLパッケージには穴開きの本革を張ったパワーシート(メモリー機能付き)を採用。座ったときに背骨のS字カーブを維持し、骨盤を立てる姿勢になる形状としている。
 エンジンは2リットルのガソリン(最高出力156馬力、最大トルク20.3kg)と1.8リットルディーゼル(116馬力、27.5kg)を搭載したモデルが10月下旬の発売。ガソリンでありながらディーゼルエンジンのように圧縮着火する新型エンジン「スカイアクティブX」を搭載したモデルは2020年1月以降の発売を予定している。
 駆動方式は2WD(前輪駆動)とAWD(四輪駆動)が選べる。車両本体価格は239万円(ガソリン2WD)~371万円(スカイアクティブX、AWD)。

力強いディーゼル


 試乗したのは、1.8リットルのディーゼルエンジンを搭載したXD・Lパッケージ。運転席は着座位置が高めで、左右や斜め後ろの視界は良好。真後ろはリアウインドーが小さいのでやや見にくい。
 センターディスプレーは横長の8.8インチで、車載ナビの地図やオーディオの操作、車の状態に関するさまざまな情報を表示する。ナビの縮尺を切り替える動作は従来型に比べて格段にスムーズになっていた。
 1.8リットルのディーゼルエンジンは、2.5リットルガソリンエンジン並みの27.5kgの最大トルクをわずか1600回転で発生する。アイドリングではディーゼルのからからした音が聞こえるが、走りだしてしまえばガソリンエンジンと変わらない静かでスムーズなエンジンだ。レギュラーガソリンに比べて15~20円安い軽油で走り、しかもリッター19.2km(WLTCモード)の優れた燃費性能が魅力だ。
 6速ATは大きなトルクを生かして、2千回転ほどでシフトアップしていく。追い越し加速も低回転を保ったまま速度を増していくので、ゆったりした気分で運転することができる。少し気になったのは、発進や追い越しでアクセルをぐっと踏んだ際に、エンジン回転が上がるまでに一瞬の時差を感じたこと。
 走行中の室内は、マツダ3から採用されている騒音対策技術によりとても静かだ。足回りは少し引き締められているがごつごつするほどでもない。

優れた操縦性


 背の高いSUVにもかかわらず操縦安定性に優れているのがCX-30の特長だ。コーナリングや急ハンドルの際に車両の挙動を安定させるG-ベクタリングコントロール(GVC)プラスの効果が大きい。
 ステアリングの動きに対して車がアクセルやブレーキを微妙に調整して、スムーズにカーブを抜けることができるようにする機能。遠心力で車体がカーブの外側に引っ張られるアンダーステアとは無縁で、ヘアピンカーブもステアリングを切り込むだけであっけなく通過してしまう。
 直進安定性に優れ、ステアリングの座りもいい。時速60km以上で動作する車線維持機能は全車標準装備。車が車線からはずれる可能性があるとシステムが判断した場合には、車線に戻るようステアリングを補助する。
 一方で、先行車に追従走行するレーダー・クルーズ・コントロールは、車間距離を保つための加減速にややスムーズさを欠いていた。
 CX-30はベースになったマツダ3のハッチバックに比べて全長で65mm、ホイールベースは70mm短い。加えて視界がいいので、狭い道でも取り回しは楽だ。全幅はいずれも1795mm。このサイズは世界的に乗用車の標準になりつつあるが、日本の道路にはやはり大きい。
 スタイルは好みもあるが、車高が低くてスポーティーなマツダ3の方を流麗だ。実用性は、荷室が広く、室内のスペースにも余裕があるCX-30が優れる。操縦性や走行性能は互角。車高が高いCX-30がハッチバックと同等の操縦性を実現しているのは大したものだ。
 購入に際して実際に比較されるのは車体とエンジンが一回り大きいCX-5だという。こちらは、使い勝手を取るか余裕を取るかが選択の基準になるだろう。

リポータープロフィル

【長瀬稚春】 運転免許歴44年。紀伊民報制作部長