初めて3ナンバーに
カローラは1966年に誕生し、世界150以上の国と地域で累計4750万台以上が販売されている。国内ではハイブリッド(HV)のプリウスやアクア、小型車ヴィッツに主役の座を譲っているが、海外では人気が続いている。
カローラの国内モデルはこれまで、狭い道路で使いやすいように海外モデルより車体が小さく、5ナンバーサイズ(全幅1700mm以下)を保っていた。今回のモデルチェンジで初めて1700mmを超えることになり車格も1ランク上がった。それでも海外モデルに比べると一回り小柄に仕上がっている。
小回り性能にもこだわっている。最小回転半径は、15インチタイヤを装着するベースグレードで5mを維持している。16インチ、17インチのタイヤを装着する上級グレードは5.3mとやや大きい。「小型の車が必要」という法人向けには、従来の5ナンバーサイズのモデルを継続販売する。
HVとガソリン、ターボも
カローラ・シリーズには2018年6月、「スポーツ」(ハッチバック)が追加されている。セダンとワゴンがモデルチェンジしたことで新シリーズがそろった。
車体の拡大に合わせてエンジンも、1.5リットルから1.8リットルへと一回り大きくなった。1.8リットルの自然吸気エンジンは最高出力140馬力、最大トルク17.3kgを発生。7速スポーツシーケンシャルシフトマチック付きCVT(自動無段変速機)と組み合わせている。
HVもエンジンを1.5リットルから1.8リットルに拡大した。プリウスと同じユニットで、システム総合出力は122馬力。もう一つのエンジンは1.2リットルターボ。最高出力116馬力、最大トルク18.9kgを発生する。ターボエンジンと組み合わせるトランスミッションは6速マニュアル(手動)のみ。先行して発売されたスポーツのターボにはCVTも設定されている。
デザインはセダンで全高を1435mm、ツーリングで1460mmに抑えて、低く構えたスポーティーな外観とした。先代のフィールダー(ワゴン)は商用車のイメージが強かったが、ツーリングはハッチバックと見間違えるほどスマートに仕上がっている。
荷室スペースは大きく、セダンはゴルフバッグ3個、ツーリングは4個が入る大きさ。ツーリングは後部座席を倒すと、幅1464mm、奥行き1953mmの空間を設けることができる。
内装は、インストルメントパネルにソフトパッドを採用するなど上質に仕上げている。W×Bグレードのシートは合成皮革を使ったスポーティータイプで、座り心地もいい。
予防安全機能では、自転車や夜間の歩行者を検知し衝突の可能性がある場合にはブレーキをかける「トヨタ・セーフティー・センス」を標準装備。駐車場でのブレーキとアクセルの踏み間違いによる事故を防ぐため、ガラスや壁などの静止物を検知して警告音を出したり自動ブレーキをかけたりする機能もある。
また、高速道路で車線の中央を走るようステアリング操作の一部を支援するレーントレーシングアシストや、全車速対応のレーダークルーズコントロールも備える。
スマートフォンと連携
試乗車は、ツーリングの最上級グレードであるHVのW×B。乗り込んでまず目に入ってくるのはインストルメントパネルに設置された大きなディスプレイ。トヨタ車として初採用のディスプレイオーディオだ。画面は7インチが標準で、一回り大きい9インチはオプションになっている。
FM/AMチューナー、USB入力による音楽や動画の視聴、ブルートゥースによるスマホのハンズフリー通話に加えて、スマホのアプリを画面上で表示・操作できるスマートデバイスリンク(SDL)を搭載。対応の地図アプリとして、LINEカーナビが登場した。アプリに話し掛けることで目的地を設定したり、LINEのメッセージを送受信したりできるので便利だ。
アップル・カープレイ、アンドロイド・オートにもオプションで対応しているので、日頃スマホで使っている地図アプリを表示してカーナビとして使えば、常に最新の情報で目的地にたどり着ける。
スマホと連携させるのではなく、車載ナビを使いたい人のためにエントリーナビキット(6万6千円)とTコネクトナビキット(11万円)がオプションで用意されている。
HVのパワーユニットは、エンジンが最高出力98馬力、モーターは72馬力、システム最高出力は122馬力。プリウスで実績のあるシステムなので完成度は高く、モーターで滑らかに走りだし、モーターとエンジンの切り替えもスムーズだ。
カローラといえば、1年前に北海道で運転したレンタカーは乗り心地も悪く、正直、あまりいい印象ではなかった。新型カローラは乗り心地や操縦性が改善され、舗装が荒れた場所でも室内は静か。車格は確実に上がり、大衆車の枠を卒業した。
車幅は今回、先代モデルより50mm広い1745mmになったが、前後、左右とも見切りがいいので、街中での取り回しは楽だった。後部座席の空間は頭上、膝前とも握り拳縦一つ分の余裕があった。荷室を広く取っているので車体の長さを考えると少し狭いが、大人4人が乗車しても窮屈な思いをしなくて済む広さはある。
成長した新型カローラの車両本体価格はHVで240万~300万円、オプションの装備や登録諸費用を加えると300万円を超える。安全装備の充実や快適性の向上を考えると致し方ないが、価格の面でも大衆車を卒業した。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴44年。紀伊民報制作部長