新車試乗記

スバル フォレスター アドバンス

【スペック】

全長×全幅×全高=4625×1815×1715mm▽ホイールベース=2670mm▽車重=1640kg▽駆動方式=AWD(四輪駆動)▽エンジン=1995cc水平対向4気筒DOHC、107kW(145馬力)/6000回転、188Nm(19.2kg)/4000回転▽モーター=10kW(13.6馬力)、最大トルク65Nm(6.6kg)▽トランスミッション=CVT(自動無段変速機)▽燃料消費率=14.0km(WLTCモード)▽車両本体価格=309万9600円

【試乗車提供】

大阪スバル田辺店
(田辺市中万呂867-2、0739・23・1740)

[2019年7月11日 UP]

 スバルのスポーツ用多目的車(SUV)フォレスターは、同社の最量販車種。スムーズな水平対向エンジンと常時四輪駆動(AWD)による安定した走り、居眠り運転を防止するドライバーモニタリングシステムをはじめとした予防安全性能が売り物だ。

e-BOXERを搭載


 フォレスターの車種構成は、2リットルの水平対向エンジンとモーターを組み合わせたe-BOXER搭載のAdvance(アドバンス)と、2.5リットルの自然吸気エンジンを搭載したツーリング、プレミアム、Xブレイクの計4グレード。アドバンスが最上級グレードという位置付けで、販売台数も全体の47%を占める。
 水平対向エンジンは、向かい合ったピストンが水平方向に往復して振動を打ち消すので、スムーズな回転が得られる。また、重心が低いので車全体の運動性能を引き上げることができる。現在国内ではスバルだけが生産している。
 e-BOXERの2リットルエンジンは、最高出力145馬力、最大トルク19.2kgを発生する。組み合わせるモーターは13.6馬力、6.6kgと小型。スムーズな発進や加速に貢献するが、トヨタのハイブリッド(HV)のようにモーターのみで巡航する力はない。
 自然吸気の2.5リットルエンジンは最高出力184馬力、最大トルク24.4kgを発生。燃費はe-BOXERがガソリン1リットル当たり14.0km(WLTCモード)であるのに対して、2.5リットルは13.2kmと大きく変わらない。ゴー・ストップが多い市街地の燃費はe-BOXERが有利だが、高速道路では逆転する。
 車両本体価格は、アドバンスの309万9600円に対して、2.5リットルの最上級グレードであるプレミアムが302万4千円とわずかに安い。

居眠り運転や脇見を防止


 スバルは早くから安全運転支援技術に取り組み、ステレオカメラを利用した独自の「アイサイト」を開発。2010年から14年までの5年間に販売したスバル車およそ30万台の追突事故を調査したところ、アイサイト搭載車の事故発生率は84%も少なかった。
 それをさらに強化した安全機能がツーリングアシスト。時速0~120kmの速度域でアクセル、ブレーキ、ステアリングの操作を支援。区画線と先行車を認識して渋滞や混雑した道路でも追従走行することができる。
 アドバンスに標準装備したドライバーモニタリングシステムは、車内に設置したカメラを利用して運転者の状態を判定し、走行中に一定時間以上目を閉じていたり顔の向きが大きく動いたりすると警報を鳴らす。
 見通しの悪い交差点で左右の映像を確認できるフロントビューモニターもオプションで用意されている。
 駆動方式は、路面や走行条件に応じて前後輪に駆動力を最適に配分するアクティブスプリットAWDを全車に採用。カーブで内輪側にブレーキをかけて旋回性能を高めるアクティブ・トルク・ベクタリングを装備している。
 四輪の駆動力やブレーキをコントロールして悪路からの脱出性能を高めるXモードは、滑りやすい路面に適した「スノー・ダート」とタイヤが埋まってしまうような路面で威力を発揮する「ディープスノー・マッド」が手元のスイッチで切り替えられる。

安定した走り


 試乗したアドバンスは、オプションの本革電動シートを装備。茶色のシートは高級感があり座り心地もいい。シートポジションのメモリー機能はドライバーモニタリングシステムと連動しており、登録した運転者を認識するとシートの高さや前後位置、背もたれの傾き、ルームミラーの角度などが自動で再現される。
 HVのモーターは最高出力13.6馬力と強力ではないが、発進時には車を前に押し出す感触がはっきり伝わってくる。モーターが補助するので、アイドリングストップからの再始動もスムーズだ。
 走りだしてまず感じるのは静粛性が高く、視界がいいこと。最近はデザインを優先するため視界が悪い車が多いが、スバルは死角の低減を重視している。運転席からの視界確保は安全運転の基本になるので、デザインと両立させてほしいところだ。
 試乗車は車重が1640kgあるので2リットルのエンジンでは力不足ではないかと心配していたが、勾配がきつい坂道でも必要十分な動力性能を発揮した。
 ハンドリングは安定性を重視した設定で、コーナリング特性は素直。スバルのAWDは時速60kmでバイパスを走っているだけでも二輪駆動の車にない安定性を感じることができ、路面の状況や天候を問わず安心して運転できる。
 室内は広い。後部座席は膝前にこぶし縦二つ分、頭上に二もつ分の余裕がある。リアシートは座面の厚みがたっぷりあって座り心地がいい。後部座席にもエアコンの吹き出し口があり、スマートフォンの充電コンセントも二つ備わるなど、同乗者への配慮も行き届いている。
 SUVはレジャーやアウトドア用途が中心の車として誕生したが、その後乗用車の一ジャンルとして世界的に定着した。力強いスタイルや乗り降りのしやすさ、室内の広さ、運転のしやすさなどが人気の理由だろう。
 一方で、海外市場の要望に合わせて車体が大きくなり、車幅が1.8mを超える車種が多い。広い道ではゆったり走れるが、住宅街や山間部では大きさを痛感することになるので、日ごろの用途に合わせて車種を選びたい。

リポータープロフィル

【長瀬稚春】 運転免許歴44年。紀伊民報制作部長