新車試乗記

日産 デイズハイウェイスター

【スペック】

全長×全幅×全高=3395×1475×1640mm▽ホイールベース=2495mm▽車重=860kg▽駆動方式=FF▽エンジン=659cc水冷3気筒DOHC、38kW(52馬力)/6400回転、60Nm(6.1kg)/3600回転▽モーター=2.0kW/1200回転、40Nm/100回転▽トランスミッション=CVT▽燃料消費率=28.6km(JC08モード)、21.2km(WLTCモード)▽車両本体価格=156万7080円

【試乗車提供】

日産プリンス和歌山販売田辺支店
(田辺市上の山1丁目8の16、0739・22・8132)

[2019年4月10日 UP]

 日産自動車と三菱自動車は、新型の軽乗用車「デイズ」と「ekワゴン」をそれぞれ発売した。両社の合弁会社であるNMKVのマネジメントで日産が企画・開発した新型車で、軽自動車として初めて同一車線運転支援技術を採用した。力強い新型エンジンの搭載や静粛性の向上により商品力も高まった。兄弟車種のうち、日産デイズの上級グレードであるハイウェイスターXプロパイロットエディションに試乗した。

脚が組める広さ


 日産は、標準車である「デイズ」とスポーティーな外観の「デイズハイウェイスター」を設定。三菱は標準車「ekワゴン」と、縦型3灯式LEDヘッドライトを採用した「ekクロス」をラインアップした。ekクロスのフロントグリルは先に発売されたオールラウンドミニバン「デリカD:5」の流れをくむ個性的なものだ。
 フルモデルチェンジに当たって、車の骨格であるプラットホーム(車台)を一新。前輪と後輪の軸間距離(ホイールベース)を65mm延長することで後席の足元を70mm広くした。これにより、大人が脚を組むことができるほどのスペースを確保した。リアシートは前後のスライドが可能なので、使い方によって荷室と座席のスペースを調節できる。スライド操作が荷室側からできるのも便利だ。リアシートの背もたれを前に倒したときに荷室は平面にはならず、段差が残る。
 エンジンは最高出力が49馬力から52馬力に、最大トルクが5.7kgから6.1kgに向上。最大トルクの発生回転が5500回転から3600回転に下がったので、特に低速での力強さが増した。さらに、ハイウェイスターとekクロスには小型モーターを使ったハイブリッドシステムを採用。最高出力2kW、最大トルク40Nmのモーターが発進加速やアイドリングストップからの再始動を補助する。
 ハイウェイスターとekクロスには最高出力64馬力、最大トルク10.2kgのターボエンジンも設定されている。

プロパイロット搭載


 安全装備は「軽自動車もここまで来たか」というほど充実している。
 アクセルとブレーキを踏み間違えた場合にエンジン出力を抑えてブレーキを制御する「踏み間違い衝突防止アシスト」はコンビニのガラスも検知し、前進、後退のいずれでも作動する。前進時には歩行者も検知する。
 衝突回避を補助するインテリジェントエマージェンシーブレーキは、対車両では時速10~80km、歩行者に対しては60kmまで作動し、ぶつかる可能性がある場合にはブレーキを掛ける。
 時速60km以上で車線からはみ出しそうになった場合には、車線逸脱防止支援システムが警報を出すとともに、ステアリングを戻す力を発生させる。
 これらの安全装備はグレードにかかわらず全車に標準装備。さらに、プロパイロットエディションは、高速道路でドライバーの負担を軽減する同一車線運転支援システムを装備する。前方を走行する車と一定の車間距離を保って追従走行し、走行中は白線を検知して車線の中央を走るようにステアリングを制御する。渋滞中には、先行車との距離を保って停止状態を維持。先行車が発進したら、ステアリングのスイッチを押すかアクセルを踏めば再発進して追従走行する。
 上空から見下ろしているような映像で駐車を補助するアラウンドビューモニターには、車の周囲で人や自転車が動いた場合に運転者に知らせる移動物検知機能を追加した。
 ユニークな安全機能は、メーカーオプションのSOSコール(事故自動通報システム)。万一の事故の際にエアバッグが開くと、専門オペレーターに自動通報。あおり運転に遭遇して危険を感じたときなどには天井のボタンを押すとオペレーターとつながり、警察との連携をサポートしてくれる。

動力性能が向上


 試乗したハイウェイスターXプロパイロットエディションは、52馬力の自然吸気エンジンを搭載。従来のデイズは発進や上り坂でエンジンの力不足をはっきり感じたが、新型エンジンは性能が大きく向上した。ちょっとした上り坂なら、アクセルを意識して踏み込まなくても元気に走ってくれる。モーターによるアシストも貢献しているのだろう。街中を中心に使うのならターボなしでも十分だった。
 ステアリングの反応は素直で、カーブを思ったように曲がってくれる。背の高い車特有のいやな横傾き(ロール)も少ない。ステアリング操作は低速時に軽いので、力のない女性でも運転しやすいだろう。
 高速道では、同一車線の走行を支援するプロパイロットが頼りになる。設定ボタンを押すとステアリングがずっしり重くなり、直進安定性が増す。緩やかなカーブでは、車が自動でステアリングを操作しながら車線の中央を維持してくれる。先行車があれば車間距離も一定に保ってくれるので、長距離の走行が格段に楽になる。
 静粛性もずいぶん向上した。高速走行でもエンジン音や路面からの騒音がよく抑えられていて、風切り音も小さかった。軽乗用車ではトップクラスの静かさで、一クラス上のコンパクトカー並みと感じた。自動無段変速機(CVT)は走行状況によってエンジン回転を細かく制御しているようで、時速70kmでは下り坂や平らな場所で1800回転、上り坂では4000回転程度までと幅があった。
 内装は黒を基調にしてシンプルにまとめられており、9インチの大きなナビ(オプション)が見やすい。サイドブレーキはボタンを押すだけの電子式で高級感がある。運転席のシートがしっかりしているのもいい。
 安全装備が充実したデイズ。プロパイロットを搭載しているグレードとそうでないグレードの価格差は9万7200円あるが、長距離ドライブや通勤で高速道路を利用する機会が多い人には搭載車を勧めたい。

リポータープロフィル

【長瀬稚春】 運転免許歴43年。紀伊民報制作部長