モーター主体で走行
HVには、スポーツハイブリッドi-MMDを採用。走行状況に応じて「EVドライブモード」「HVドライブモード」「エンジンドライブモード」を切り替える。
通常の走行では、バッテリーに蓄えた電気を使ってモーターのみで走行。強い加速をする際には、エンジンで発電した電気でモーターを駆動する。高速クルージングは、エンジンでの走行がモーター走行より効率がいいため、エンジンと車輪を直結して走る。2リットルのエンジンは最高出力145馬力、最大トルク17.8kg、モーターは184馬力、32.1kgを発生する。モーターの最大トルクは3リットルガソリンエンジンに相当する。JC08モードの燃費はガソリン1リットル当たり25.8kmと優秀だ。
ガソリン車の1.5リットルターボエンジンは、レギュラーガソリン仕様ながら専用開発のターボチャージャーにより2.4リットル自然吸気エンジン並みの最高出力190馬力、最大トルク24.5kgを発生する。燃費は15.4km。
ガソリン車、HVともに前輪駆動(FF)と四輪駆動(4WD)が設定されている。ガソリン車には、車体の外寸そのままで3列シートを備える7人乗りがある。
車内は高級な仕上げ
試乗車はHVの上級グレードであるEXマスターピース。本革仕様のパワーシートに加えて、ドアやインパネも上質に仕上げており、高級感たっぷりだ。スターターボタンを押して起動し、ギアをドライブモードに入れようとしたらシフトレバーがなかった。左手の先にあるのはD、N、R、Pと刻印された四つのボタン。トヨタのプリウスに初めて乗ったときに、ゲーム機のようなセレクターに戸惑ったが、このボタン式もなかなかのカルチャーショックだ。「エレクトリックギアセレクター」というのだそうで、バックギアだけは選択を間違わないように引き上げる操作になっていた。
Dボタンを押してスタートした。走りだしは静かで力強い。アクセルを踏むとすぐにモーターの大きなトルクが立ち上がり、過給が始まったターボ車のように加速する。バッテリーに蓄えた電力を使い、モーターだけで走っているため静粛性が高い。
急な加速や上り坂で発電用のエンジンが始動しても車内に入ってくる音は小さい。車速の上昇とエンジン音の高まりが運転者の感覚と一致するよう設計されているため、エンジンとモーターがばらばらに動いているという違和感はなかった。
車内の静粛性を保つため、騒音に対して逆位相の音を出してノイズを打ち消すアクティブノイズコントロールを採用している。ただ、路面がざらついた場所を走った際のロードノイズの侵入はやや大きめと感じた。もう一段遮音が行き届くとさらに高級感が増すだろう。
足回りはソフトで乗り心地がよく、ゆったり運転できる。高速道路では追従機能付きのクルーズコントロールが使えるので、長距離の運転も楽だ。カーブでの操縦性は弱いアンダーステアで、ステアリングの切れ味は素直。大柄な車体にもかかわらず軽快な走りを披露してくれた。
見晴らしのいい運転席
CR-Vの車体は全長4605mm、全幅1855mmあり、マツダのCX-5(全長4545mm、全幅1840mm)に比べてもやや大きい。しかしボンネット左右の膨らみが運転席から見えるので車幅の感覚がつかみやすく、ガラス面積が大きいので死角も少ない。最近はスタイルを重視して後方の確認がしにくい車が多いが、CR-Vは見やすかった。
後部座席は、運転席をリポーターの体格に合わせて膝の前に握り拳が縦に二つ分、天井は一つ半の余裕があった。後部座席も見晴らしがよく、リラックスして乗っていられる。後部のドアは90度まで大きく開き、乗り降りがしやすかった。試乗車は5人乗りだが、ガソリン車には3列シートの7人乗りも設定されている。
安全装備としては、先行車や歩行者を検知して衝突被害を軽減する安全運転支援システム「ホンダ・センシング」が全グレードに標準装備されている。
400万円前後という価格帯は十分に高級車の領域に入る。FFモデルをオンロードで試乗した限り、装備、乗り心地、運動性能ともにSUVというよりもバランスの取れた乗用車という印象だった。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴43年。紀伊民報制作部長