新車試乗記

カローラ スポーツG “Z”

【スペック】

全長×全幅×全高=4375×1790×1460mm▽ホイールベース=2640mm▽車重=1400kg▽駆動方式=FF▽エンジン=1797cc水冷4気筒DOHC、72kW(98馬力)/5200回転、142Nm(14.5kg)/3600回転▽モーター=53kW(72馬力)、163Nm(16.6kg)▽システム最高出力=90kW(122馬力)▽燃料消費率25.6km(WLTCモード)▽トランスミッション=電気式無段変速機▽車両本体価格=268万9200円

【試乗車提供】

トヨタカローラ和歌山シーズ田辺店
(田辺市上の山1丁目12、0739・24・1190)

[2018年10月11日 UP]

 トヨタの新型車カローラスポーツは、スポーティーモデルとして販売されていたオーリスの後継モデル。国内向けのカローラとして初めて3ナンバーの幅広い車体が与えられた。走りの質を向上させるというトヨタの新しい車づくりに沿った新型車だ。

HVとターボの2種類


 カローラは1966年に誕生し、世界150以上の国と地域で累計4600万台以上が販売されたロングセラーモデル。国内モデルは狭い道路で扱いやすいように、全幅が1700mm以内に収まる5ナンバーサイズを守ってきたが、今回のスポーツはその殻を破った。
 スポーツのライバルは、日本車ではホンダのシビックやスバルのインプレッサ、マツダのアクセラなど。海外メーカーではフォルクスワーゲンのゴルフ、ボルボのV40、プジョーの308などが挙げられる。
 誕生から半世紀を経て、カローラの使用者が年齢の高い層に偏ってきたことから、スポーツの追加で若返りを図る。フロントのデザインは、低く抑えたボンネットと大きく口を開けたラジエーターグリル、切れ長のヘッドライトによりワイド&ローを強調。サイドからリアにかけては躍動感を表現しているという。
 パワーユニットは1.8リットルのハイブリッド(HV=エンジン98馬力、モーター53馬力)と1.2リットルのターボ(116馬力)。HVはスムーズでバランスの取れた動力性能と低燃費が特徴。ターボの出力は1.8リットルの自然吸気エンジンに相当し、低速域から幅広い回転域で大きなトルクを発生する。スポーティーな走行に向き、6速手動トランスミッション(MT)も用意されている。

操縦性と乗り心地を両立


 試乗車はHVの上級グレードであるG “Z”。スポーツタイプのシートは両端が大きく盛り上がっていて、体をしっかり支えてくれる。
 インテリアのデザインは水平基調ですっきりしている。インパネにはシボ仕上げのソフトパッドを使い、赤いステッチでアクセントを付けている。中央の見やすい位置に9インチのカーナビ(販売店オプション)が設置されていた。
 ギアのシフト操作はプリウスのようなスティックタイプではなく、ガソリン車と同じレバー式。こちらの方が自然に操作できる。電動式パーキングブレーキは、シフトレバーを「P」ポジションに入れると自動で作動し、発進の際に「D」ポジションに入れると自動で解除するので便利だ。
 発進はモーターのみで、速度が上がるとエンジンが始動する。この引き継ぎは洗練されており、全く違和感はない。
 足回りは、リヤにダブルウィッシュボーン式を採用したり、ショックアブソーバーを新開発したりして、乗り心地と操縦安定性を両立させた。市街地でマンホールのふたを踏んだり、高速道路で路面の継ぎ目を通過したりした際も「がつん」とした衝撃はなく、上手にいなしてくれる。路面のざらつきもよく吸収してくれるので、引き締まった足回りなのに不快感がない。
 さらに、高速走行時の直進安定性に優れるのがカローラスポーツの優れた点だ。ステアリングに手を添えているだけで真っすぐ走っていくような安心感がある。
 安全装備のレーントレーシングアシストは、レーダークルーズコントロールで先行車に追従して走行している時に、車線の中央を走るようにステアリング操作を支援してくれる。これを「おせっかい」と受け取るドライバーもいるようだが、長時間の高速走行では疲労を低減してくれるだろう。
 予防安全機能であるトヨタ・セーフティー・センスは全車に標準装備された。歩行者(夜間、昼間)や自転車運転者(昼間)を検知してブレーキをアシストしたり、全車速追従のレーダークルーズコントロールを採用したりするなど、機能が大幅に向上した。
 操縦性は素直だ。オーリスに近い少し粘るようなハンドリングで、スポーツ多目的車C-HRにも共通する感触。ステアリングを切るとコーナーの出口に向けて自然に回り込むような味付けになっている。スポーツモードにするとステアリングが重くなり、エンジンも高回転を保つので、よりスポーティーな走行が楽しめる。
 動力性能は、一般的な走行では十分にスムーズで力強い。しかし、スポーティーモデルという前提で走りを楽しもうと思うと、もう一段のパワーが欲しくなる。電気式無段変速機は、交通の流れに乗って走る分には不自然さはなくなったが、急加速をするとエンジン回転が先に上昇して速度が後から付いてくるという特性が顔をのぞかせる。

「つながる車」に


 カローラスポーツは、最上級車種クラウンと同じ車載通信機DCMを全車に標準装備。これにより、トヨタのTコネクトサービスが3年間無料で使えるようになった。
 サービス内容は、警告灯点灯時にコールセンターから適切なアドバイスが受けられる「eケア走行アドバイス」や、ドアの開閉が離れた場所からスマートフォンで確認できるセキュリティー機能、ナビの目的地設定にオペレーターが対応してくれるサービス、LINEアプリを利用した車との通信機能など多岐にわたる。このサービスは4年目以降は有料(税別、年間1万2千円)になる。

新しい燃費モード


 今年10月から国際的な燃費の測定方法であるWLTC表示が始まった。日本独自の測定方法だったJC08モードに比べて実際の燃費により近いデータが表示される。これまでの平均燃費だけでなく、「市街地」「郊外」「高速道路」に分けた燃費が表示されるので、自分の走行条件に合った燃費がイメージしやすい。
 カローラスポーツのHVは、JC08モード燃費がガソリン1リットル当たり30.0kmであるのに対して、WLTCモードでは25.6kmと15%ほど低くなる。市街地は24.9km、郊外は27.2km、高速道路は25.0km。HVは走行条件による燃費の差が小さいのが特徴だ。
 これがターボだと、平均燃費16.4kmに対して、市街地12.9km、郊外16.9km、高速道路18.2kmと、走行条件による差が大きくなる。

リポータープロフィル

【長瀬稚春】 運転免許歴43年。紀伊民報制作部長