安全性能に定評
XVは「都会派のSUV」という位置付け。ライバルはトヨタのC-HRやホンダのヴェゼル、マツダのCX-3など。個性的で力強いデザインが多いSUVの中ではおとなしい顔つきをしている。AWDの採用と200mmの最低地上高によりオフロード性能は高いが、本格SUVならフォレスターを選んでほしいということなのだろう。
エンジンはインプレッサと共通の水平対向4気筒2リットル(154馬力)と1.6リットル(115馬力)の2種類。
スバルは先進安全機能に定評があり、XVは時速50kmの速度差まで有効な緊急ブレーキや時速0~100kmで働く全車速追従機能付きクルーズコントロール(ACC)を標準装備している。緊急ブレーキは歩行者や自転車も認識する。高速道路や自動車専用道で車線中央を維持するアクティブレーンキープも備えている。
今回はオーナーに同乗してもらい、所有半年間の感想も聞いた。
優れた走行安定性
運転席に座ってスターターボタンを押すと2リットルの水平対向エンジンは静かに回りだした。「独特の音がする」とオーナー。確かに直列4気筒のエンジンとはひと味違うように感じるが、最新の水平対向エンジンは個性的な排気音がずいぶん抑えられている。
走りだしはスムーズだ。低回転から力があり、CVT(自動無段変速機)との相性もいい。上り坂での追い越し加速などではちょっと力不足を感じることもあるが「急な追い越しはともかくとして、普段走るには十分なパワーだと思う」とオーナーは話す。
走行中の車内は静かだ。「これまで乗っていた1.8リットルのワゴンに比べるとずいぶん静かな気がする」という。「タイヤの走行音が気になる」とも言うが、このクラスとしては路面からの騒音(ロードノイズ)も小さい。
FF(前輪駆動)だった前車に比べて、AWDの安定性はどうだろうか。
「普段走っていて、路面に吸い付くような安定感がある。悪路はまだ走っていないので滑りやすい路面でのAWDの効果は分からない」という。オーナーはこれまで、フォルクスワーゲンのゴルフ・バリアントやアウディA3など欧州車にも乗ってきた。「前の国産車は足回りが軟らかくてふわふわしていたが、XVはゴルフやアウディに匹敵する安定感がある」と話す。
普段は軽自動車に乗っている奥さんも「どっしりとした安定感があって運転しやすい」と話しているそうだ。SUVといってもくせがなく運転しやすい。着座位置が高めで見晴らしがいいことも運転のしやすさにつながっているようだ。
デザインへの評価については「後ろから見ると少し腰高に見える点が気になる」と感想を話した。デザインはトヨタのC-HRが魅力的だったが、後方が見にくくてバックが難しいことや、家族を乗せたときの後部座席の開放感などを考慮してXVを選んだという。
後部座席の広さは、リポーターに運転席を合わせて膝の前に握り拳縦1個半、頭上は1個分の余裕があった。C-HRも後部座席の広さは十分にあるが、ドアの窓が高い位置にあるので圧迫感がある。
XVはこれまで乗っていた5ナンバーサイズの車よりも車幅が10cm広く、家族での利用は快適性が増した。半面、仕事で狭い道を走る際には苦労することもあるという。
その走りに満足
試乗では紀勢自動車道を走り、先進安全機能「アイサイト3」の車線維持機能を体験した。動作するとハンドルの座りがはっきりと変わり、車線中央から車がずれるとステアリングがじわりと動いて走行位置を修正してくれる。手を軽く添えているだけで真っ直ぐに走ってくれるのはありがたい。
「最初は誰かにハンドルを握られている感じで違和感があったが、慣れてきたらとても便利で安心」とオーナー。
「車の買い換えに当たって先進安全機能は要らないと思っていたが、実際に乗ってみるとやはり安心。ACCによる追従走行も便利。高速道路では短い区間でも利用する」
ただし、アイサイト3はカメラで前方を監視しているため、フロントガラスが曇ると機能が解除されてしまう。梅雨の時期などは早めに曇り止めのエアコンを入れた方がよさそうだ。
オプション装着のカーナビは、画面が大きくてカーステレオの音質がいいという純正品を選んだ。テレオの音は期待通りだったが、地図の表示にはやや不満があるという。道案内の精度は、まだあまり使っていないので分からないという。
車載の燃費計の表示は、ガソリン1リットル当たり13.7kmを表示していた。走行条件にもよるが、カタログ燃費が16.4kmであることを考えると悪くない。XVはガソリンタンクが63リットルと大きいので、10リットルの余裕を見ても満タンで700km以上走れる計算になる。
半年間乗って、小物の収納スペースが少ないなど小さな不満はあるものの、走りの満足度は高いというのがオーナーの感想だ。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴43年。紀伊民報制作部長