新車試乗記

ホンダ シビック ハッチバック

【スペック】

全長×全幅×全高=4520×1800×1435mm▽ホイールベース=2700mm▽車重=1350kg▽駆動方式=FF▽エンジン=1496cc水冷4気筒DOHCターボ、134kW(182馬力)/6000回転、220Nm(22.4kg)/1700~5500回転▽燃料消費率=18.0km(JC08モード)▽トランスミッション=CVT(自動無段変速機)▽車両本体価格=280万440円

【試乗車提供】

ホンダカーズ田辺・稲成店
(田辺市稲成町46、0739・24・4500)

[2018年5月10日 UP]

 シビックは1972年に誕生したホンダの主力車種。国内では2010年にいったん販売が終了したが、17年9月に7年ぶりに復活した。小型車の代名詞だったシビックはモデルチェンジのたびに大きくなり、新型は3ナンバー車。1.5リットルターボエンジンを搭載したハッチバックとセダン、そして2リットル、320馬力のターボエンジンを積むタイプRの3モデルが発売された。いずれもスポーティーな走りが持ち味だ。

ハッチバックとセダン


 初代シビックは台形の小さな車体に大きな室内スペースを確保した実用的な車として誕生した。車体の寸法は全長3405mm、全幅1505mm、全高1325mm。現在の軽自動車(全長3395mm、全幅1475mm)とあまり変わらない大きさだった。
 当時の自動車メーカーは公害対策による排ガス規制に苦しんでいた。ホンダはそれをCVCCという独自の技術で克服し、さらに「RS」というスポーティーモデルまで設定した。
 シビックはその後、モデルチェンジを受けるたびに大きく立派になり、やがて小型車の主力の座をフィットに譲る。国内では8代目で販売を終了し、9代目は海外だけでの販売になった。そして7年の空白を経て、10代目で国内販売を再開した。
 今回試乗したハッチバックの寸法は全長4520mm、全幅1800mm、全高1435mm。幅広く、低く構えたスタイルになった。セダンは国内で生産するが、ハッチバックとタイプRはイギリスで生産し国内に輸入する。
 セダンとハッチバックはともに1.5リットルターボエンジンを搭載するが、仕様が異なる。セダンのエンジンはレギュラーガソリン仕様で、最高出力173馬力、最大トルク22.4kgを発生。これに対してハッチバックは欧州基準のハイオク仕様で、オートマ車が182馬力/22.4kg、6速マニュアル車は182馬力/24.5kgと高出力だ。
 いずれもステップワゴンに搭載されているレギュラーガソリン仕様の1.5リットルターボエンジン(150馬力/20.7kg)に比べて大幅な高出力化が図られている。

優れた加速と操縦性


 30年前、中古の2代目シビックに1年ほど乗った。元オーナーの目から見ると、新型シビックは大きく立派になり、すっかり別の車に発展したという印象。低く構えたスタイルは、いかにもスポーティーで、走りが楽しめそうだ。後ろからの姿は、排気管が車体の中央に2本まとまって出ているのが特徴。タイプRは3本排気で、リアハッチに大きなスポイラーが付いている。
 室内は黒で統一されている。インパネの中央には大きなアナログ形式の回転計があり、走行速度はデジタルで表示される。乗り込むと、シートの位置が低く、足元にはアルミ製のアクセルペダルとブレーキペダルが銀色に輝いている。
 エンジンは強力で活発だ。前回試乗した三菱のエクリプスクロスも1.5リットルターボエンジン(150馬力/24.5kg)を積むが、性格は違う。エクリプスが低回転から大きなトルクを感じるのに対して、シビックのエンジンは回転を上げることでパワーを楽しむエンジンだ。いずれも、一般道を走るのにこれ以上の力は要らないというぐらい強力なエンジンである。
 シビックのCVT(自動無段変速機)は、エンジン回転と速度の上昇が一致するダイレクト感があり、AT(自動変速機)のような気持ちのいい加速が楽しめる。エンジン回転だけが先に上がって、後から速度の上昇が追い付いてくるというCVT特有の不自然さがない。足回りはスポーツタイプで堅めだが、サスペンションがよく動くので乗り心地はいい。
 ステアリングの操作に対して車体の動きが正確に反応する。車体の剛性が高く、堅い殻に包まれているような安心感がある。カーブの途中で路面がうねっていても、あおられて進路を乱すということがない。サーキット走行にも適応しているタイプRと同時開発したことで基本性能を高めているそうだ。
 長距離走行に対応したクルーズコントロールやレーンキープも備えているので、高速道路をリラックスして走ることができる。紀勢自動車道はうねった場所が多いが、しっかりした車体の下でサスペンションがよく動き、進路を乱されることがない。直進時のステアリングの座りがしっかりしているので、手を添えているだけで車が真っすぐに走ってくれるという安心感がある。高速走行でのエンジン回転も低く抑えられており、クルージングの燃費も良さそうだ。
 一方で、走行中にタイヤと路面がこすれて発生するロードノイズは大きく、車内の静粛性は高くない。走行性能を重視したスポーツタイプのタイヤを履いているのも一因かもしれない。

納車は半年待ち


 後部座席は、リポーターのポジションに運転席を合わせると、膝の前に握り拳が縦一つ半入る余裕があった。ドアガラスの下端が低めなので外が見やすく、圧迫感なく乗っていられる。荷室は奥行き、深さとも十分にあって使いやすそうだ。
 試乗していると、スピードを出さなくても運転が楽しい車に出合うことがある。スズキのスイフト・スポーツやマツダのロードスター、アクセラなどがそうで、シビックもその一台に加えたい。これで車内の騒音がもっと抑えられれば、スポーツ性と実用性を兼ね備えた快適な車に仕上がると思う。
 販売店に聞くと、主な購買層はシビックの名前に親しんだ中高年世代。セダンも用意されているが、ハッチバックの人気が圧倒的という。若い世代は興味を示しながらも、家族で使いやすい軽のハイトワゴンやミニバンを選択するという。
 イギリスで生産されていることもあって、新型シビックの納車は契約してから6カ月かかるそうだ。乗り換えを考えている場合は早めに販売店に相談した方がいい。

リポータープロフィル

【長瀬稚春】 運転免許歴43年。紀伊民報制作部長