余裕の室内空間
スペーシアの試乗車はベースグレードのハイブリッドG。内装はベージュを基調にしたおしゃれな仕上げ。フロントシートはベンチタイプで、アームレストも付いている。計器板は、大きなスピードメーターが正面にどんとあるシンプルなデザインだ。
室内はとても広い。スライド式の後部座席を後ろまで下げると、成人男性が楽々と足を組める。こういった余裕の空間はコンパクトカーをしのぐもので、ハイトワゴンの人気が高いのはもっともだと思う。
後部座席のスライドドアは、このグレードは左右とも手動。開け閉めは軽くできるが、子どもを乗せる機会が多いのであれば、運転席から操作できるパワースライドドアの方が安心だ。
荷室の使い勝手で工夫されているのは、荷室側から後部座席を前後に調節できる機能。荷室の広さを調節するのにわざわざスライドドアを開けなくて済むのは助かる。
ハイブリッドGが搭載するのは最高出力52馬力の自然吸気エンジン。それを3.1馬力のモーターで補助する。車重が重くなりがちなハイトワゴンはエンジンの力不足が心配だが、スペーシアは軽快にスタートした。車重が850kgと軽いことと、モーターによるアシストの相乗効果だろう。
バイパスを交通の流れに乗って走っても、動力性能に不満はなかった。スポーティーに走りたいとか、定員乗車する機会が多いということでなければ必要十分な性能だろう。
乗り心地はソフトでゆったりしていた。急なカーブでは、ステアリングを切った感覚よりも車が大回りするアンダーステアが強く、車体の傾きも大きめだった。
迫力あるグリル
もう1台の試乗車はカスタムの最上級グレード、XSターボ。先代モデルの地味なデザインから大きく変身し、迫力あるフロントグリルが目を引く。
64馬力のターボエンジンにもモーターのアシストが加わる。発進加速は力強く、普通乗用車と遜色ない。追い越しをかけた時の反応も鋭い。着座位置が高いので見晴らしが良く、動力性能にも余裕があるので、一回り大きな車に乗っているような安心感がある。
ノーマルのスペーシアと同様にカスタムも乗り心地がいい。足回りは少し引き締められているが、外観から想像するよりもソフトだ。アンダーステアはノーマルよりも弱く、カーブでの安定性はこちらの方が高い。
内装は黒で統一。上級グレードはステアリングやシフトノブに本革を採用している。シートの縁もレザー調の仕上げが施されていて高級感がある。
試乗車は、メーカーオプションのヘッドアップディスプレーも搭載していた。これはフロントガラスに走行速度や燃費、ナビの案内、進入禁止表示などを映し出すもので、前方から視線をそらさずにさまざまな情報が確認できるので便利だ。
安全装備を充実
今回のモデルチェンジでスズキがアピールしているのが安全装備の充実。
リアバンパーに内蔵した4つの超音波センサーが車両後方の障害物を検知し、後退時に衝突しそうになった場合に自動でブレーキを掛ける「後退時ブレーキサポート」を軽自動車で初めて採用。前方の衝突被害軽減ブレーキや誤発進抑制機能、車線逸脱警報機能などとセットで全車に標準装備した。
周囲を立体的に確認できる3Dビュー(オプション)も軽自動車初の採用。住宅街の狭い交差点など見通しの悪い場所で人や車が近づいてきたときに知らせてくれる左右確認サポート機能も搭載されている。
ライバルのホンダN-BOXは国内新車販売のトップ。ダイハツのタントも人気がある。2つの顔を手に入れたスペーシアが2車にどれだけ迫るのだろうか。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴42年。紀伊民報制作部長