190馬力のディーゼル
CX-8は、マツダのこれまでの国内ラインアップになかった車種。デザインは5人乗りSUVのCX-3やCX-5と共通の「魂動」をさらに洗練させた。正面から見るとCX-5に似ているが、横に回ると一回り大柄なことが分かる。車幅は1840mmでCX-5と変わらないが、全長は355mm長く、全高は40mm高い。
エンジンは、CX-5が2リットルと2.5リットルのガソリン、2.2リットルディーゼルの3種類をそろえているのに対して、CX-8はディーゼルのみ。このディーゼルエンジンは毎年のように改良が加えられており、CX-8への搭載に当たって最高出力が175馬力から190馬力に、最大トルクが42.8kgから45.9kgに引き上げられた。1800kgを超える車体を軽々と走らせるのに十分な性能だ。
燃費は軽油1リットル当たり17.6km(JC08モード)と経済的。国際的な燃費モードであるWLTCも公表されており、市街地12.7km、郊外15.7km、高速道路18.0kmとなっている。総合燃費は15.8km。従来のJC08モードに比べて実際の走行に近い数値になっているので参考になる。
車種構成は、ベースグレードのXD、装備が充実したXD・プロアクティブ、豪華装備のXD・Lパッケージの3タイプ。XDとプロアクティブは2列目のシート形状により6人乗りと7人乗りが選べる。Lパッケージは6人乗りのみ。各グレードとも前輪駆動(FF)と四輪駆動(4WD)が用意されている。
Lパッケージの2列目シートは左右が独立したキャプテンシートに大型アームレスト付きのコンソールボックスを備える。プロアクティブとXDの6人乗りは、コンソールボックスがなく中央がウオークスルーになっているので、3列目シートへの乗り降りがしやすい。7人乗りは3人掛けのベンチシートになっている。
上質な内装
試乗車は最上級のLパッケージ。ドアを開けて最初に目に飛び込んできたのは真っ白なナッパレザー(革)のシート。インパネには天然木の木目を生かすなど高級な仕上げを施している。運転席と助手席の間には大型の肘掛けを備えたセンターコンソールがあり、やや高いインパネも合わせて、運転席をぐるりと囲まれたような感じになる。
エンジンを始動すると、アイドリングではカラカラというディーゼルらしい音が響くが、車内では気にならないレベル。そこからアクセルを踏み込むと滑らかに回転が上昇し、エンジンの音は全く気にならなくなる。
改良前の175馬力のエンジンでも車重1600kgのCX-5を走らせるのに十分な性能だったが、改良が加えられたディーゼルエンジンは一段と力強く、静かでスムーズになり、CX-5より一回り大きな車体を軽やかに走らせる。
マツダのディーゼルエンジンはもともと、走りだしてしまえばガソリンエンジンと違いが分からないほどスムーズだったが、今回の改良でさらに洗練された。
低回転で大きなトルクを発生するこのエンジンの良さは、上り坂を走っているときに実感する。1500回転も回っていれば坂道をぐいぐい上り、そこからの加速もギアを一段落とすことなくこなすことができる。
足回りは腰がありながらも柔らかめの設定。サスペンションがよく動き、路面の凹凸やざらつきを上手に吸収してくれる。ハンドリングはややゆったりしているが、カーブをスムーズに曲がることができるマツダの独自技術「Gベクタリングコントロール」の効果もあって、1800kgの車重を意識せずに運転することができる。
車内は、風切り音やロードノイズの侵入が少なく静かだ。このため高速道路の走行は快適。直進安定性に優れている上に、車線の逸脱を防止するレーン・キープ・アシストがさりげなく車線中央を走るようにステアリングを修正してくれるので、リラックスして運転することができる。
ソファのような座席
2列目の座席は天井の高さや足元のスペースがたっぷりあり、ゆったり乗車できる。白いナッパレザーのシートは良く出来たソファのような座り心地だ。3列目の座席は、身長173cmの男性が座って、頭上は天井ぎりぎりの高さ。足は膝がやや持ち上がる姿勢になるが、シートが良いので長距離ドライブでも不満は少なそう。
2列目シートの中央にコンソールボックスがあるLパッケージとベンチシートは、3列目に乗り降りする際に2列目の背もたれを前方に倒す必要がある。3列目の利用が多い場合にはウオークスルーのシートが使い勝手がいい。
安全運転の支援では、歩行者対応の自動ブレーキやアクセル・ブレーキペダルの踏み間違い対応、車線逸脱警報、先進ライトなどを装備しており、安全レベルが高いサポカーS・ワイドに該当する。フロントガラスに走行速度や交通標識、ナビの案内などを表示するアクティブ・ドライビング・ディスプレーも標準装備しており、視線を前方からそらさずに運転できる。
CX-8は発売日(2017年12月)の3カ月前から予約受け付けを開始。3カ月間で月間販売計画の6倍に当たる約7300台の受注があった。「家族のために多人数乗車の車が必要だが、運転の楽しさはあきらめたくない」「家族サービスと趣味を両立させたい」という30~40代のドライバーに支持されているという。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴42年。紀伊民報制作部長