新車試乗記

スズキ スイフトスポーツ

【スペック】

全長×全幅×全高=3890×1735×1500mm▽ホイールベース=2450mm▽車重=970kg▽駆動方式=FF▽エンジン=1371cc水冷4気筒DOHC直噴ターボ、103kW(140馬力)/5500回転、230Nm(23.4kg)/2500~3500回転▽トランスミッション=手動6速▽燃料消費率=16.4km(無鉛プレミアムガソリン、JC08モード)▽車両本体価格=192万2400円(セーフティーパッケージ装着車)

【試乗車提供】

スズキアリーナ田辺・田辺スズキ販売
(田辺市下万呂567、0739・22・4416)

[2017年11月9日 UP]

 スズキのコンパクトカー「スイフト」シリーズの追加車種として、スイフトスポーツが発売された。排気量1.4リットル、最高出力140馬力のターボエンジンを1トンを切る軽いボディーに搭載。強烈な加速と優れたコーナリング性能は「スポーツ」を名乗るのにふさわしい。それでいて200万円を切る車両本体価格は破格だ。

1.4リットルターボを搭載


 試乗車は、スポーツの専用カラーである鮮やかな黄色。この色とマニュアルミッションの組み合わせが人気なのだそうだ。車体はノーマルのスイフトに比べて幅が40mm広く、スイフトでは初の3ナンバーになった。車幅の拡大に伴いトレッド(左右のタイヤの間隔)も30mm広がっており、直進安定性と旋回性能が高められている。専用のバンパーとフロントグリル、張り出した前後フェンダーにより、ノーマルのスイフトよりたくましく見える。
 搭載の1.4リットルターボエンジンは最高出力こそ140馬力と控えめだが、最大トルクは23.4kgと、2.2リットル自然吸気エンジン並み。タービンを回す排気を過給がかかりやすいように制御しており、アクセル操作に対する反応を高めているという。ガソリンは無鉛プレミアムガソリン(ハイオク)が指定。これを車重わずか970kgの軽量化した車体に積むのだから遅いはずがない。
 内装は黒を基調に、メーターパネルやシートのステッチに赤をあしらってアクセントを付けている。回転計はやや低めの6300回転あたりからレッドゾーン。速度計は時速260kmまで刻まれているが、常用する40~100kmの数字が左側に追いやられているので少々見にくい。回転計と速度計の間にはマルチインフォメーションディスプレーがあり、ターボの過給圧が表示される。
 シートは左右の支えがしっかりしたセミバケットタイプ。コーナリング中に体がずれることがなく、安心してスポーツ走行ができる。ただし横幅は少し狭いので、大柄の男性にはちょっときゅうくつかもしれない。

強烈な加速性能


 スイフトスポーツの変速機は6速のマニュアルと6速AT(自動)が設定されている。久しぶりのマニュアルミッションにエンストの心配をしたが、スタートはあっけないほどスムーズだった。クラッチは軽くてつながり方が素直。ターボエンジンは低い回転からトルクがたっぷりあり、2速発進できるほどだった。
 発進加速はコンパクトカーとしては異例に鋭い。アクセルを強めに踏めば、3000回転を超えたあたりからシートに体を押し付けられるような猛烈な加速を体感できる。一般道の走行では、フルスロットルにすることはまずないと思うほどだ。
 このエンジンは低回転での柔軟性も併せ持っているので、走りだしてしまえば頻繁にギアチェンジすることなく、オートマ感覚で運転できる。ちょっとした追い越しならシフトダウンの必要はなく、時速60km、6速、1500回転からでも十分な加速が得られる。回転を上げなくても坂道を力強く上ることができるのもターボエンジンならではの特徴だ。
 スイフトの持ち味であるコーナリング性能は圧倒的だった。ヘアピンカーブでもアンダーステアをほとんど感じることなく、ステアリングを切り込んだ分だけぐいぐい曲がっていく。車体のロール(横傾き)も少なく、カーブが続く山道をリズミカルに走り抜けることができた。速めの速度で急カーブに差し掛かってもあっけなく通過してしまい、運転がうまくなったと錯覚するほどだ。
 トヨタ86やマツダ・ロードスターといった本格スポーツモデルに迫る性能。5ドアハッチバックのコンパクトカーでこれほどコーナリング性能に優れた車は乗ったことがない。

心地よい排気音


 よく曲がる小さな車なのに高速道路では直進性に優れ、どっしりとした安定感がある。巡航スピードでのエンジン回転は高めで、6速の時速70kmで2000回転弱を示していた。
 サスペンションには、スポーティーな走行に特化したモンローのフロントストラットとリアショックが採用されている。足回りは堅めだがよく動き、路面のうねりや凹凸で振られても素早く収束する。常に路面の状態が伝わってくる緊張感ある足回りなので、長距離ドライブでは気疲れするかもしれない。
 車内に入ってくる騒音は大きめだ。グリップ性能を重視したコンチネンタルのタイヤを装着していることもあって、路面が荒れた場所ではノイズが大きい。低めの排気音も常に車内に侵入するが、こちらはわざわざ聞かせるようにチューニングされているようだ。この車に乗る人にとっては、エンジン回転の上昇とともに響く排気音は心地よいBGMになるのだろう。
 スポーツモデルといっても、安全装備は抜かりない。メーカーオプションのセーフティーパッケージ(8万6400円)は、歩行者や車を検知する衝突被害軽減システム、車線逸脱抑制機能、誤発進抑制機能(AT車のみ)、ハイビームアシスト機能、SRSカーテンエアバッグ、車間距離を保つアダプティブクルーズコントロールなどがセットになっている。これはぜひとも装着したい。
 スイフトスポーツの価格は、マニュアルミッション車が183万6000円、6速ATが190万6200円。セーフティーパッケージを装着しても200万円を切る設定になっている。これだけスポーツ性の高いモデルとしては破格の値付けだ。車好きにはたまらないモデルだろう。

リポータープロフィル

【長瀬稚春】 運転免許歴42年。紀伊民報制作部長