リッター28.4キロの低燃費
カムリは、全世界100カ国以上で販売されるグローバル車種。車体サイズは全長4885mm、全幅1840mm、全高1445mm。トヨタを代表するセダン、クラウン・アスリートと比べると全長で10mm短いものの、幅は40mm広く、全高は5mm低い。
日本では大型のセダンになるが、世界標準では中型に属する。体が大きい欧米人にとっては手頃なサイズなのだろう。車格は日本で例えるとカローラのような存在。アメリカではとても人気があり、15年連続で乗用車販売のトップを獲得している。
セダンにもかかわらず、デザインは大胆だ。正面から見ると台形のフロントグリルが大きく口を開け、押し出しが強い。FFにもかわらずボンネットは長く、ルーフ(屋根)がなだらかな線を描いてトランクに続いている。この伸び伸びとしたデザインは、真横から見るとかなりスポーティーだ。
搭載する2.5リットルの新型エンジンは最高出力178馬力、最大トルク22.5kmを発生する。燃焼効率を向上させることで、ガソリンエンジンとしては世界最高レベルの最大熱効率41%を実現した。これに最高出力120馬力、最大トルク20.6kgのモータを組み合わせており、システム最高出力は211馬力に達する。
燃費は優秀だ。大きな車体にもかかわらず、ベースグレードのXでガソリン1リットル当たり33.4km、充実装備のGとGレザーパッケージで28.4kmの低燃費を実現している。プリウスの37.2~40.8kmには及ばないものの、大型セダンがリッター30km前後も走るのは驚異的だ。
優れた静粛性
試乗車は中間グレードのG。内装はトヨタらしい丁寧な仕上がりだ。車幅が広いので、乗り込んだだけでもゆったりした気分になれる。HVでありながら変速操作は一般的なレバー式なので、ガソリン車から乗り換えても違和感なく操作することができる。ドライブモードからレバーを右側に倒すと、マニュアルミッションのように手動でギアを切り替えられる。
Dレンジに入れてアクセルをゆっくり踏み込む。モーターだけでするすると走りだし、そのまま時速50kmまで無音で加速した。遮音が行き届いているので路面からの騒音も少なく、一番大きかったのはエアコンの吹き出し音だった。
アクセルを強めに踏み込むと早めのタイミングでエンジンが始動するが、それでも室内に入り込む騒音は小さい。2.5リットルのエンジンと強力なモーターによる加速は滑らかで力強く、右足の力加減一つで思い通りにパワーを引き出すことができる。
カムリは高速道路でも快適な乗り心地が味わえる。紀勢道の南紀田辺~上富田インター間は高速道路にもかかわらず路面の状態が悪く、凹凸があったりうねったりした箇所が多い。そこでもカムリは滑らかにショックを吸収し、車体が小刻みに上下に動いたり不快な振動を伝えてきたりすることがなかった。ステアリングは直進安定性に優れ、うねった路面でも進路は乱れなかった。
試乗車はオプションのヘッドアップディスプレーを装備していた。これは走行中の速度やナビの案内をフロントガラスに映し出す機能。視線を変えずに速度を確認できるのは運転していてとても楽だ。安全運転にもつながる。
同じトヨタのセダンでも、クラウンはどっしりした落ち着いた乗り心地が特徴であるのに対して、カムリは軽快感が持ち味。服装に例えれば、フォーマルとカジュアルの違いといえそうだ。
ゆったり快適に
大型のセダンなので、後部座席はくつろぎのスペースだ。膝前には握り拳縦二つ分の余裕があった。また、車高が低いにもかかわらず頭上の空間も十分だった。シートの座面はたっぷりした厚みがあり、背もたれも高いのでリラックスして乗車できる。スタイル優先の車はどうしても後部座席の見晴らしが犠牲になりがちだが、カムリは窓の下端が低い位置にあるので開放感がある。長時間のドライブでも快適に過ごせそうだ。
トランクは開口部がやや狭いものの幅と奥行きがたっぷりあり、ゴルフバッグを4個収納できる。また、トランク内のレバーを引いてリアシートを倒すとトランクスルーになり、長尺物を載せることができる。
安全面では、衝突回避支援パッケージ「トヨタ・セーフティー・センスP」を標準装備。歩行者も検知する自動ブレーキや車線逸脱警報、オートハイビーム、先行車のスピードに合わせて車間距離を保つレーダークルーズコントロールがセットになっている。
さらにメーカーオプションで、車線変更時に後続車を検知するブラインドスポットモニターや車庫入れなど低速時の衝突を回避するクリアランスソナー、後退時に左右後方から近付く車を検知して衝突被害を軽減するリヤクロストラフィックアラートが用意されている。
4ドアセダンはかつて乗用車の主流で、実用的な5ドア・ハッチバックは今ほど人気がなかった。ところが現在は立場が逆転し、セダンは輸入車や高級車を除くと少数派になってしまった。そんなマーケットでカムリの受注台数は、発売から1カ月間で1万1500台と、月間販売目標(2400台)の5倍に達した。これがセダンの復活につながるのだろうか。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴42年。紀伊民報制作部長