強力なディーゼルエンジン
初代CX-5はマツダの新世代商品群の第一弾として2012年に発売された。躍動感あふれる魂動(こどう)デザインはその後発売のアクセラやデミオにも採用された。
2代目の外観は、好評だった初代を継承しながら全高を15mm低くし、ヘッドライトの幅も狭めて「切れ長の目」にした。これにより、先代のボリューム感のあるスタイルから、やや低く構えたスタイルに変わった。車体のスリーサイズは全長4545mm、全幅1840mm、全高1690mmと大柄だ。
エンジンは2リットルのガソリン(最高出力155馬力、最大トルク20.0kg)、2.5リットルのガソリン(190馬力、25.6kg)と2.2リットルディーゼルターボ(175馬力、42.8kg)の3種類。
2.2リットルディーゼルエンジンは、300万円前後で買える国産車のエンジンとしてはトップクラスの動力性能を誇り、CX-5の魅力の一つとなっている。40kgを超える最大トルクは自然吸気のガソリンエンジンに換算すると4リットル並み。しかもその強大なトルクをわずか2000回転で発生するので、日常の運転でとても扱いやすい。
特に恩恵を感じるのは追い越し加速と上り坂での走行。スムーズな追い越しには先行車と20km程度の速度差が必要になるが、CX-5は少しアクセルを踏み増すだけで素早くプラス20kmの速度に達する。
上り坂も得意種目だ。エンジン回転が1500回転を超えていれば、平地と同じようにぐいぐい加速していく。これもディーゼルならではの走行性能だ。
ディーゼルは長距離走行や坂道を走る機会が多い人に向くエンジン。通勤や買い物などで短距離の走行を繰り返す人や、発進・停止の多い市街地での利用にはガソリンエンジンの方が向いている。
静かになった室内
CX-5はモデルチェンジでどのように進化したのだろうか。試乗車はディーゼルの中間グレードに当たるXDプロアクティブ。エンジンを掛けるとまず、アイドリングの音が従来より一段と静かになったことに気付く。マツダのディーゼルエンジンはもともとディーゼル特有のカラカラ音が小さいが、エンジン制御の見直しなどにより静粛性が一段と高まった。
走行中の室内騒音も大きく改善された。タイヤや路面からの音が侵入する経路を遮断したり、風切り音の発生を抑えたりといった騒音対策を実施。粗い路面を走った際の耳障りな音も小さくなった。サスペンションも路面のざらつきや細かい振動を上手に吸収するので、乗り心地は高級車の領域に入ったと思うほど向上した。ステアリングも引っかかりやざらつきがなく滑らかに回るので、気持ち良く運転することができる。
走行性能が向上する新技術「Gベクタリングコントロール」も採用された。ステアリング操作に応じてエンジンの駆動トルクを細かく制御することで4つの車輪にかかる荷重を最適化し、カーブをスムーズに曲がるようにする技術。CX-5は、重心の高い大柄な車体にもかかわらずカーブを曲がるのが得意で、特に山道の上り坂で効果を実感した。真っ直ぐに走っているときでもステアリングの細かい修正が少なくなり、長距離走行の疲労も少なくなるという。
この機能はオン・オフができないので、多くの人は「運転しやすい車だね」という一言で終わってしまうかもしれない。
安全装備も充実
安全装備も一段と充実した。衝突防止の自動ブレーキは、歩行者も検知するタイプにグレードアップ。先行車に追随して走るレーダー・クルーズ・コントロールも停止状態から時速100kmまで、全車速をカバーするようになった。このほか、アクセルとブレーキの踏み間違いによる暴走を防ぐ誤発進抑制制御や車線逸脱防止機能、後方から接近する車両を検知する機能などをフル装備する。
視線を移さずに速度やナビの案内を見ることができるアクティブ・ドライビング・ディスプレーは、フロントガラスに投影されるようになった。安全運転につながる一方、常に視界に数字や画像が見えるので、慣れるまではうっとうしいかもしれない。
内装はシンプルながら上質にまとめられている。センターコンソールは幅が広く、アームレストもしっかりしている。小物の収納スペースは最近の車としては少なく、ドアポケットももう少し大きいと便利だ。
後部座席のスペースはゆったりしていて、天井は握りこぶし縦2つ分、膝の前には縦1つ分の余裕がある。窓が大きいので開放感があり、トヨタのC-HRのような圧迫感はない。
試乗車は、マツダ車のイメージカラーでもあるソウルレッドクリスタルメタリックで、吸い込まれるような深みのある色合いが魅力だった。一方でほこりや擦り傷が目立ちそうなので、こまめな手入れが必要だ。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴42年。紀伊民報制作部長。