ターボは1.2リットル
初対面のC-HRは思わず「格好いいじゃないか」とつぶやくほどスタイリッシュだった。車台が共通のプリウスが大胆ながら控えめに見えるのに対して、C-HRは筋肉質でたくましい。試乗車の車体には宣伝用の大きなステッカーが貼ってあったが、それすらデザインに溶け込み、まるで競技車両のように見えたほどだ。
バリエーションは、1.2リットルのターボが四輪駆動(4WD)のみ、HVが前輪駆動(FF)のみという設定。ターボのFFやHVの4WDは選ぶことができない。
最初に試乗したのはターボのS-T。最高出力116馬力、最大トルク18.9kgの性能は1.8リットルの自然吸気エンジンに相当する。燃費はガソリン1リットル当たり15.4km(JC08モード)。同じ型式のエンジンを積むオーリスのターボがハイオク仕様であるのに対して、C-HRはレギュラーガソリン仕様であるのがうれしい。
このエンジンは発進加速や追い越しで十分な力を発揮してくれる。わずか1500回転から最大トルクを発生するので、上り坂をエンジン回転が低いまま余裕で上っていくので扱いやすい。自動無段変速機(CVT)との相性もいい。レッドゾーンは5500回転から。試乗車なので高回転まで回すことはできないが、フル加速した時にどのような特性なのか興味津々だ。エンジン音は静かで、アイドリング時には止まっていると思うほどだ。
走行モードはノーマル、スポーツ、エコの3つのポジションがあり、試乗車はあらかじめスポーツに設定されていた。試乗の途中でノーマルモードに切り替えてみたら、だいぶゆったりした走りになった。この車は常時スポーツモードにしているのが似合う。
こういったモード切替はほとんどの車が手元の専用ボタンで操作できるが、C-HRは取扱説明書を読みがらステアリングのスイッチを何度も操作しなければならないのが難点だ。
鍛えられた足回り
HVは強力なモーターで発進するので、スタートの瞬間はターボより力強い。続いてエンジンがスムーズに始動する。動力源が静かなので、路面の状態がいい場所では車内はとても静かだ。路面が荒れているところではその分、タイヤからの騒音が耳に入ってくる。
市街地の走行はHVが最も得意とするところだ。時速20~30kmのスピードではモーター主体で走るので、ターボに比べて圧倒的に燃費がいいだろう。
ヨーロッパのサーキットコースで鍛えたという足回りは腰が強くて粘りがある。堅めの設定ながらコツコツとした振動が伝わってこないので乗り心地がいい。背が高めの車体ながら、カーブでのロール(横傾き)も抑えられている。
操縦性をチェックするため、山間部に進路を取った。スバルのインプレッサやマツダのアクセラはカーブの入り口でステアリングの切り角を決めるとそのままレールの上を走るように気持ちよく回り込んでいくが、C-HRはカーブの途中で積極的にステアリングを操作するような走り方が楽しい。ドライバーの入力に対して車が素早く反応し、多少乱暴な操作をしてもしっかりした足回りが受け止め姿勢が乱れない。タイヤがどれぐらい路面をグリップしているかという感触が伝わってくるので不安なく運転できる。
受注はHVが8割
運転席の着座位置は高め。スタイル重視でありながら前方と横方向の見切りはいい。一方で斜め後ろと後方の視界はかなり犠牲になっている。後方を映し出すバックカメラと、後退時に左右後方から接近する車両を感知するリアクロストラフィックアラートはぜひとも装着したい。
後部座席は、座面の位置が低くて窓の位置が高いので、男性でもドアパネルがあごのあたりまでくる。おまけに窓が小さいので圧迫感がある。前席のヘッドレストに遮られて前方もほとんど見えない。頭上の空間は握り拳縦一つ分、膝前の空間もおなじく拳一つ分。つま先が前席の下に入るのできゅうくつな感じはしないが、後部座席に乗るのではなく自分で運転したい車だ。
ターボとHVというパワーユニットの違いによってC-HRの印象は随分変わる。外観のイメージからはターボのパワーモードで走るのが一番似合っているが、HVの落ち着いた走りもいい。
発売から1カ月の受注は、月間販売目標6千台に対して4万8千台。内訳はターボが1万1千台、HVが3万7千台となっている。やはり多くの人がHVの燃費の良さに魅力を感じるのだろう。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴41年。紀伊民報制作部長。