新車試乗記

スバル インプレッサ

【スペック】

インプレッサ2.0i-L(AWD) 全長×全幅×全高=4460×1775×1480mm▽ホイールベース=2670mm▽車重=1370kg▽駆動方式=AWD(4輪駆動)▽エンジン=1995cc水平対向4気筒DOHC、113kW(154馬力)/6000回転、196Nm(20.0kg)/4000回転▽トランスミッション=CVT▽燃料消費率=16.8km(JC08モード)▽車両本体価格=237万6000円

【試乗車提供】

大阪スバル田辺店
(田辺市中万呂867-2、0739・23・1740)

[2017年1月12日 UP]

 2016-17日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したスバルのインプレッサに試乗した。国産車では初の歩行者保護エアバッグや衝突防止のアイサイト3など安全装備を全車に標準装備。新しい骨格(プラットフォーム)の採用により、滑らかで上質な乗り味を得ている。

歩行者保護エアバッグも


 スバルが開発した次世代のプラットフォーム「スバルグローバルプラットフォーム」は、高剛性化と低重心化を徹底して車の安全性や操縦性を高めているという。インプレッサを皮切りに、今後発売する新型車に共通して採用する。
 ボディータイプは5ドアハッチバックの「スポーツ」と4ドアセダンの「G4」がある。エンジンは2リットル自然吸気(154馬力)と1.6リットル自然吸気(115馬力)の2種類。いずれもスバルが得意とする水平対向4気筒エンジンである。ハイブリッド(HV)やターボは設定されていない。
 ボディーサイズはモデルチェンジにより全長で40mm、全幅で35mm大きくなった。外観は先代モデルのイメージを継承しながら、ワイド&ローを強調。フロントガラスを寝かせることでスポーティーなイメージを演出している。一方でワゴンタイプのレヴォーグのような力強さはなく、全体におとなしい印象を受ける。
 スバルらしさが最も表れているのは安全装備の充実ぶりだ。国産車で初めて採用された歩行者保護エアバッグは、歩行者と衝突したことをバンパー内のセンサーが検知するとフロントガラスと窓枠の下端をエアバッグが覆い、歩行者の頭部へのダメージを軽減する。輸入車ではボルボがいち早く採用している。
 予防安全装備であるアイサイト3はステレオカメラで前方を監視し車や歩行者、自転車などと衝突しそうになると警報を出したり緊急ブレーキをかけたりする。その性能は国産車では最高水準と評価されている。スバルの調査によると、アイサイト搭載車は非搭載車に比べて追突事故の発生率が84%も減少したという。
 乗員保護の装備では、ドライバーの脚を守るニーエアバッグや側面衝突のダメージを軽減するカーテンエアバッグなど7種類のエアバッグを搭載している。
 特筆すべきは、これらの安全装備をグレードに関係なく全車に標準装備したことだ。安全装備の設定は自動車メーカーによって違いがあり、上級グレードには標準装備していても、中級グレードやベースグレードにはオプション装着としている例が多い。さらに、下位グレードにはオプション設定すらしていないケースもある。
 交通事故防止に効果があるこういった装置はスバルのように装着車を増やし、普及を加速させるべきだろう。

上質な乗り味


 試乗車は2リットルエンジンを積んだ2・0i-LのAWD(4輪駆動車)。運転席に座るとまず、内装の仕上げがいいことに感心する。ステアリングやシフトノブには本革を使用。インパネやドアトリムなど各所にソフトパッドを使うなど丁寧に仕上げている。
 走りだしは滑らかだ。路面のショックを上手に吸収するサスペンションの設定、ステアリングの滑らかな動き、エンジンのスムーズな回転、静かな室内の相乗効果だ。
 試乗当日は強風が吹き、横風が当たる場所ではハンドルを取られたり車体が振られたりするような悪条件だった。しかしインプレッサはAWDの本領を発揮し、全く風の影響を受けずに快適に走り続けた。走行中の風切り音も小さかった。
 新開発の2リットル直噴エンジンは実用域のトルクが大きく、改良されたCVT(自動無段変速機)との相性がいい。発進加速では、エンジン回転の上昇と速度の上昇が一致するので気持ちよく走ることができる。ただし、上り坂で速度を上げようとしたり追い越しで一気に加速したりするとエンジン回転が先に上がり、後から速度が乗ってくるというCVTのくせが顔を出す。
 レヴォーグが搭載する1.6リットルターボエンジンのように、回転の上昇に伴ってぐいぐい力を増していくようなエンジンではないので、低めの回転域を上手に使った走り方が似合う。
 操縦性の面では、サスペンションの構造を刷新して運動性能や乗り心地の向上、騒音の低減を図っているという。旧モデルのインプレッサは素直な操縦性が印象的だったが、新型インプレッサもその特長を引き継いでいる。
 ステアリングは旧モデルより少ない切り角で大きめに向きを変えるよう設定されており、急カーブを回るのもスムーズだ。カーブの出口付近でわずかにアンダーステアが感じられるが、思い通りのラインを走ってくれる。

長距離ドライブも楽々


 アイサイト3の機能を体験するため、紀勢自動車道の南紀田辺インターチェンジ(IC)から上富田ICまで走ってみた。アイサイト3のクルーズコントロールは先行車と一定の車間距離を保ちながら追従走行し、渋滞に差し掛かればブレーキを操作しなくても減速し停止する。先行車が発進すればアクセルを踏むか手元のスイッチを押すだけで追従走行を再開する。高速走行中に車線からはずれないようステアリングをアシストするアクティブレーンキープの機能も備えている。
 片側1車線の紀勢道では、速度調節を車に任せっきりにできるので走るのがとても楽だった。先行車が加速・減速した際の動きも自然で、ステアリングに軽く手を添えているだけで安心して走っていられる。AWDによる走行安定性も加わるので、長距離ドライブの疲労は最小限で済むだろう。
 最近はデザインを重視するあまり死角の多い車もあるが、インプレッサはフロントガラスの傾斜角が強いながらも前方の見切りが良く、左右のガラス面積も大きいので死角が少ない。車幅の感覚もつかみやすかった。
 インプレッサは最も安い1.6リットルの2輪駆動車で192万2400円と200万円を切りながら、歩行者保護エアバッグやアイサイト3など安全装備が充実している。安全性重視の車選びをするのならお買い得といえそうだ。

リポータープロフィル

【長瀬稚春】 運転免許歴41年。紀伊民報制作部長。