HVはリッター27.2km
フリードのラインアップには3列シート(6人乗り、7人乗り)のフリードと、2列シート(5人乗り)のフリード+(プラス)がある。フリードがファミリー向けであるのに対して、フリード+はシートを倒すと車中泊もできるなどレジャー向けで、独身者や子育てを終わった世代の購入が多いという。このほかに、車いす仕様やサイドリフトアップ仕様の福祉車両も用意されている。
ガソリン車は排気量1.5リットルで、エンジンの最高出力は131馬力。HVは1.5リットルのエンジン(110馬力)とモーター(29.5馬力)を組み合わせている。前輪駆動車(FF)の燃費はガソリン車がリッター19.0km、HVがグレードにより26.6~27.2km。また、コンパクトミニバンでは初めてHVの四輪駆動車も設定されている。
ガソリン車とHVの価格差はおよそ40万円。単純にイニシャルコスト(車両価格)とランニングコスト(ガソリン代)で計算した場合、年間の走行距離が少ないのであればガソリン車が経済的だ。ただし、多人数で乗る機会が多い人は動力性能に優れたHVの方が満足感が高いだろう。発売から1カ月の受注比率はHVが53%、ガソリン車が47%となっている。
車内の移動も楽々
今回はHVで最も装備が充実した3列シート・6人乗りのEXに試乗した。
6人乗りは運転席と助手席との間に20cmほどの通路があり、2列目のシートも独立しているのでウオークスルーが可能。大人でも車内を楽に移動することができる。
身長174cmのドライバーが運転席の位置を合わせてから2列目に座り、膝前の空間をこぶし縦一つ分に調節。そのまま3列目に移動して座っても膝の前にはやはりこぶし一つ分の余裕があった。先代に比べて1~3列目までの広さを90mm広げた効果が出ているようだ。コンパクトミニバンとしては最大クラスの広さで、大人6人が乗っての長距離ドライブも苦にならない。
一方のフリード+は、レジャーでの使い勝手が良さそうだ。前席を前に出して後席をたたみ、荷室を上下2段に仕切るボードを設置すると、大人2人が車中泊できる平らな空間を設けることができる。低床設計なので、荷物は荷室の下段に収納することができる。
力強い発進
HVのスタートは滑らかで力強かった。タイヤの最初の一転がりをトルクの大きいモーターが受け持つためで、追い掛けるようにエンジンが始動し、合わせ技で加速していく。トヨタのHVに比べるとエンジンが始動するタイミングは早い。
追い越しをかけた時の反応も素早い。一定速度からアクセルを踏むとすぐにモーターのアシストが働き、排気量の大きな車のように加速する。
試乗ではほとんどの区間を省エネ運転のECONモードで走ったが、動力性能はこれで十分だった。ECONモードを解除するとエンジンのパワーが前面に出てより力強い走りが可能になるが、フリードの性格を考えるとモーターを有効に使った方が快適に走ることができる。
足回りはソフトな味付けになっており、ゆったりした気分で運転することができる。柔らかめの足回りに加えて重心が高いのに、カーブでのロール(横方向き)は小さかった。ステアリングを切った際の回頭性を向上させたり、フロントスタビライザーの剛性を上げたりすることできびきびとした走りを実現したという。
試乗していてふと、スピードメーターの横に道路の制限速度が表示されていることに気付いた。安全装備「ホンダセンシング」の機能の一つである。ホンダセンシングは衝突軽減ブレーキをはじめ、路側帯を歩く歩行者との衝突を回避するステアリング操作の支援、高速道路で車線中央を走るようにアシストする機能などを備えている。また、先行車と一定の車間距離を保って走行することができるACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)を装備しているので、長距離ドライブの疲労も少なくて済む。
フリードのライバルは、個性的な外観をまとって昨年7月に登場したトヨタのシエンタ。シエンタは今年4~9月の国内新車販売実績でダイハツの軽自動車タントに次いで5位にランクされている。上位の顔ぶれは1位プリウス(トヨタ)、2位エヌ・ボックス(ホンダ)、3位アクア(トヨタ)となっており、シエンタはミニバンではトップの売れ行きだ。
シエンタとフリードはいずれも、コンパクトな車体に6~7人の乗車が可能。スーパーへの買い物や子どもを保育所に送っていくといった日常の用途では、一回り大きいヴォクシー(トヨタ)やステップワゴン(ホンダ)、セレナ(日産)などより使いやすい。パワートレインも1.5リットルガソリンとHVをそろえていて互角。最終的にはデザインの好みと、シートアレンジを含めた使い勝手で選ぶことになるのだろう。
リポータープロフィル
【長瀬稚春】 運転免許歴41年。紀伊民報制作部長。